高齢化や税制改革の影響から近年増えているのが、親からアパートを相続する事例。
アパートの相続は大きな相続税対策にもなりますから、相続数が多く、それに伴う悩みも当相談室に多く寄せられています。
アパートは「事業」も相続するので、相続人は「経営」をしなければなりません。しかし「親から相続したアパート経営がうまくいかない」「正直、面倒」と感じている方は多いのではないでしょうか?
「だったら売ればいい!」と簡単に考えるかもしれませんが、実は親から相続したアパートを売却するには注意点もあるのです。
ここからは、相続したアパートを売却するメリットと売却に伴う注意点について解説いたします。
親から相続したアパートを売却するメリット
まずは、相続したアパートを売却する場合のメリットを考えてみましょう。
相続税対策や築古のアパートは収益化が難しい
近年はアパートの相続数の増加や空き家問題などにより、巷にアパートが溢れている状態。そんな中、相続をきっかけに始めるアパート経営で黒字にすることは非常に難しいといえます。
相続税対策のためにサブリースなどで手軽に始めたアパート経営では、とくに収益化を見込むのが困難なもの。その場合、サブリース契約の解除や管理会社の変更など、根本的な部分から見直さなければ多くの場合、経営は立ち行かなくなります。
一方、相続税対策ではなく親御さんが長く経営していたアパートの場合では、アパート自体の老朽化が問題になってくるものです。昨今、空き家問題の深刻化が取りざたされていますが、空き家は地方の戸建てだけの問題ではありません。近年とくに空き家率が上昇しているのは、集合住宅の空き家。アパートも、立地や築年数の条件がいいものではないと、なかなか借り手がつかなくなってきているのです。
アパート経営には、固定資産税や管理委託料、入居者の募集や退去に伴う費用など、継続的にかかる費用が多くあります。経営がうまくいかなければ当然赤字になってしまうため、せっかく相続した資産が目減りしていってしまうことも考えられるのです。トータルで「プラスの資産を相続した」という結果に持ち込むには、早期売却がベストな選択肢ということもあります。
維持費や負担を考えると売却した方が楽
アパートは資産のみならず「事業」を引き継ぎますから、相続人の負担は大きいといえます。アパートの管理は管理会社に丸投げすることもできますが、それだと今度は収益化が厳しくなるでしょう。
共用部の清掃やゴミ出し、確定申告など、アパート所有者のやるべきことは膨大。売却すれば当然ながら、全ての業務負担から解放されます。
資金化すれば共有者で公平にわけられる
親のアパートを、兄弟で平等に持ち分を分けて相続したケースも多いと思います。しかし持ち分は平等だとしても、主に経営に携わっているのは相続人のうちの1人というのもよくあるケース。共有者のうちの誰か1人に経営負担が偏っているとなると、負担を強いられている共有者の不満は年々大きくなっていき、兄弟仲が悪くなってしまうことも懸念されます。
一度相続した持ち分を変えるとなれば、譲渡や贈与しなければならず、違った負担が生じることもあります。また共有者が亡くなった場合には、再度、相続が発生し、所有者の関係はさらに複雑化します。
売却してしまえば、1円単位で分割することが可能。売却には仲介手数料等の諸費用がかかりますが、費用についても持ち分に応じて負担することになるので、正真正銘「公平」に資産を分割することができます。
税金や住人問題!相続したアパートの売却でよくある疑問と注意点
- 経営負担が大きい
- 管理が正直、煩わしい
- 赤字経営
このような状況になっている場合、相続したアパートを売却するメリットは大きいといえます。
ただし相続したアパートの売却では、注意すべき事項が複数あります。ここからはよくある疑問に答える形で、3つの注意点を挙げていきます。
Q.相続したアパートを売却するときは税金がかかる?
結論からいえば、相続したアパートの売却には税金がかかります。
ただし「相続したから」「アパートだから」かかるのではなく、一般的な不動産売却とかかりうる税金は同じです。
相続したアパートの売却でかかる可能性のある税金は、次の3つです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
この中でも注意が必要なのは、譲渡所得税。譲渡所得税とは、不動産を売却したことによる利益に対してかかる税金です。
譲渡所得に対する税率は、不動産の所有期間によって以下のような違いがあります。
ただし相続した不動産における「所有期間」は相続人にとっての所有期間ではなく、被相続人の所有期間が引き継がれます。
Q.アパートの住人の許可は必要?
アパートの売却に際して住人の許可が必要かですが、これはケースによります。
アパートを売却する場合に考えられる選択肢は、次の3つです。
- 入居者はそのままにアパートとして売却
- 入居者に退去してもらってアパ―トとして売却
- 入居者に退去してもらって土地として売却
このうち①であれば、住人の許可は不要です。この場合、アパートと一緒に住人との賃貸借契約も買主に引き継がれるため、住人にとってはオーナーが代わるだけのこと。継続して住むことができるので、許可は必要ありません。住人をそのままに収益物件を売ることを、「オーナーチェンジ」といいます。
一方、②③の場合は、アパートの住人に退去してもらわなければなりません。退去してもらうには、一般的に半年以上前の退去勧告と立退料が必要になります。一見、退去してもらうことはデメリットにも思えますが、明らかに経営がうまくいっている場合を除けば、アパ―トは「オーナーチェンジ物件」より住人不在の方が高額売却に期待できます。それは買主にとって転用がしやすく、収益性などが考慮されないためです。
Q.相続してすぐに売っていいの?
相続した不動産の売却で気を付けなければいけないのが、相続後すぐの売却。法律で定義されているわけではありませんが、相続後すぐに不動産を売った場合、税務署に「税金逃れ」と判断されてしまう恐れがあります。
そのため税務調査がなくなるまでの4年間は、売却に慎重にならなければなりません。
まとめ
アパートの相続は、資産だけではなく、経営の負担や手間も一緒に引き継ぐことになります。
経営がうまくいっている場合は資産の運用になりますが、アパートが増え、空き家問題が深刻化している昨今の状況で、それは一筋縄ではいきません。
売却すれば全ての負担から解放されて確実に資金化できるというメリットはありますが、売却する場合においても税金や売却時期について注意が必要です。
不動産あんしん相談室®︎では、収益物件の売却はもちろん、相続時のトラブルが発生している案件も多く扱っております。「相続から間もない」「アパート経営がうまくいかない」「共有者ともめている」どんな状況でも、ぜひお気軽にご相談ください。