高齢化が急速に進むにつれ、認知症を発症する方の数も増加し続けています。
親が認知症になってしまった場合、同居や介護施設への入居を検討する方も少なくありません。このとき問題となるのが、親御さんの家の売却です。
実は、認知症を発症した所有者の不動産を売ることは、容易ではありません。しかし、売却ができないということではありません。
本記事では、認知症を発症した親の不動産を売却するための2つの方法を解説します。
認知症発症で「資産凍結」のリスクが
認知症を発症すると、不動産を含めた資産が凍結します。
資産凍結とはつまり、預貯金を自由に引き出せなくなったり、資産の売買ができなくなったりするということです。不動産の名義変更もできません。
「意思能力」がなければ資産は動かせない
認知症が軽度であっても「意思能力」がないと判断されれば、不動産売買や所有権の移行はできません。
意思能力というのは、「不動産売買の是非を判断する能力」のこと。判断能力が欠けている所有者が契約等をしたとしても、その行為は無効となります。
「委任」にも意思能力が必要
「当人による契約が認められていないなら……」と、お子さんやお孫さんが契約を代理することを検討されるかもしれません。
しかし、代理人に委任する行為においても意思能力が必要です。よって、認知症発症により意思能力がないと判断されれば、代理人を立てて不動産を売ることもできません。
認知症発症でも不動産売却が可能!発症前~軽度なら「家族信託」
認知症は、進行具合によって症状が大きく異なります。大事なのは、認知症の疑いがあると感じたら、すぐに対応策を講じること。具体的には、“疑い”程度であれば「家族信託」を検討してみましょう。
そして、できることであれば、家族信託は「発症前」に締結しておくべきです。
家族信託とは
家族信託とは、委託者の財産の所有権のうち「管理・運用する権利」だけを受託者に任せるという信託契約です。
家族信託は、2006年の信託法改正によって翌2007年からスタートした制度。従来までは、親から子に不動産を管理・運用する権利を譲渡するには、所有権ごと移す「生前贈与」が一般的でした。しかし、生前贈与では所有権や家賃収入などを得られる受益権も移行するため、高額な贈与税がかかるなど税金面でデメリットがあります。
そして何より大きなメリットとなるのは、受託者は不動産の売買などが可能だということ。この後、説明する「成年後見制度」では、自宅は裁判所の許可を得て売却することになりますが、家族信託を結んでおくことで家族間だけで話し合って不動産の売却が可能なのです。
症状次第では発症後も締結可能
家族信託は、できることなら「認知症発症前」に締結しておくことがベストです。しかし、発症後も、症状次第では締結が可能です。
契約時に見られるのは「判断能力」。委託者の判断能力を見るのは、医師ではなく公証人です。契約内容を理解し、判断する能力があると公証人にみなされれば契約できます。
認知症発症後は原則的に「成年後見制度」で不動産売却可能
判断能力が欠けているということで家族信託が契約できなかったとしても「成年後見制度」で不動産売却が可能です。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がいなどにより判断能力が不十分な方に対し「後見人」が法的に財産の保護や支援を行う制度です。
成年後見制度には、次の2種類があります。
- 法定後見制度:本人が認知症を発症した後に、申立てにより家庭裁判所が後見人を選出
- 任意後見制度:認知症などになる前に、本人の判断であらかじめ後見人を決定する
認知症発症後に判断能力が欠けている場合には「1.法定後見制度」を選択することとなります。
ちなみに「2.任意後見制度」については、家族信託と同様の制度のようにも感じられるかもしれませんが、そもそも家族信託と成年後見制度は目的が異なります。
家族信託は、認知症発症などに備えて委託者が家族に財産管理などを「託す」方法。成年後見制度は、認知症発症などに際して被後見人が不利益を被らないように、財産を守る「援助」をする制度です。
そのため、任意後見制度によって後見人になった人も、被後見人の判断能力が著しく低下してからでなければ援助はできません。さらに、あくまで「援助」ですので、不動産売却などについても被後見人にとって有益であるという合理性が必要です。
一方で、家族信託においては、委託者は受託者に「託されて」いますので、自由に財産の管理や処分ができます。
法定後見制度における後見人は3種類
認知症などを発症した後に家庭裁判所が後見人を決定する法定後見人制度は、被後見人の状態に応じて次の3つに分かれます。
- 後見:判断能力のない人が対象
- 補佐:判断能力が著しく不十分な人が対象
- 補助:判断能力が不十分な人が対象
法定後見人として家庭裁判所から選出されるのは、親族、あるいは弁護士や司法書士などの専門家が一般的です。職業や経歴、被後見人との利害関係などを見て、ふさわしい人が選ばれます。
不動産売却は後見人の「自由」とはいかないことも
任意後見制度のご説明でも申し上げた通り、後見人制度は「援助」することを目的としていますので、どんな状況でも、どんな不動産でも自由に売却できるわけではありません。
とくに「自宅」に関しては、被後見人にとって生活の拠点=重要な不動産だと考えられることから、売却には家庭裁判所の許可が必要です。介護施設などに入居していたとしても、帰る場所がなくなることが、被後見人の不利益につながる可能性があるからです。
とはいえ、自宅が不要になった旨を伝え、自宅売却が被後見人にとって不利益でないと判断されれば自宅売却の許可はおりますのでご安心ください。
まとめ
認知症の親御さんの不動産を売却することは可能です。しかし成年後見制度では、ご自宅はとくに売却までに時間を要することがあります。
不動産あんしん相談室は、弁護士など全国の専門家と連携して不動産売却にあたらせていただいております。家族信託、および成年後見制度の概要がわかっても「自分たちの今の状況でまず何をすればいいのかわからない」という方もいらっしゃることと思います。
まだ不動産を売却できる状態ではないという方でも、どうぞお気軽にお気軽にご相談ください。
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