遺産分割
遺産分割とは遺産を分割することである。高齢化社会によって高齢者が増加すると相続の問題も増えてきているのが現状であるが、遺産分割手続きは相続権を持った相続人同士で円満な相続をおこなうことを目的とした手続きである。通常遺産分割に関して関係者全員が承諾を得た場合には弁護士等法律の専門家立会いのもとで遺産分割協議書を作成し関係者全員の署名・押印がなされることが多い。
買戻し特約
買戻し特約とは不動産に関して不動産を売却したとしても一定金額を支払うことで当該不動産を買い戻すことができるという内容の規約である。任意売却においては旧公団や公社の場合、買い戻し特約登記が設定されている場合があり、この場合には任意売却自体が困難となってしまう。登記簿謄本に買い戻し特約登記も設定されているので任意売却する場合には買い戻し特約登記の有無についてよく調べる必要がある。
遺贈
遺贈とは被相続人が相続権発生の前に第三者に贈与契約をおこなうことである。遺贈にあたっては相続人の権利を侵害することが困難なため相続人の権利として一定の権利が保護されている。遺贈は被相続人の法律行為だが相続人が受け取る相続権に関しては相続人の権利であるため被相続人と相続人の意思の調和を図るため民法上では一般の規定が設けられている。
一括売却
一括売却とは一括して不動産を売却することである。住宅ローンの滞納以外の場合で滞納者が多数の住宅を持っている場合に、売却手続きをおこなうと手続きが煩雑になるため所有不動産を一括売却することが多い。手続きにあたっては本人が自己破産をするケースや支払い困難であるケースが多いので弁護士等の法律家介在のもと、手続きがおこなわれていくことが多い。
囲繞地通行権(いぎょうちつうこうけん)
囲繞地通行権(いぎょうちつうこうけん)とは四方を囲まれた土地に関してその土地所有者が通行するために有する権利のことである。都心部等で古い住宅地だと都市再開発においてこの囲繞地通行権を考慮しないといけないケースがある。囲繞地通行権においては必要最小限度の権利として四方を囲まれた土地である、袋地の所有者が有する権利として民法に定められている。
委任契約
委任契約とは民法上の委任を内容とした契約である。通常依頼者と弁護士で一定の業務に関しておこなわれるのは委任契約である。委任契約によって委任を受けたものは善良なる管理者たる義務、すなわち善管注意義務を負うことになる。委任契約はさまざまな場合でおこなわれ請負契約とは異なり仕事の目的達成を目的条件としていない。この点で請負契約と委任契約は大きく異なる。
違約金
違約金とは契約の際に取り決めた内容に違反した場合に相手方に支払う罰則金のことである。通常、契約内容の違反があった場合には法律に基づき、違反により被った損害を賠償しなければならないことになっているが、違約金の場合は契約を結ぶ際に具体的な金額まで決めておくのが特徴である。なお、宅地建物取引業者が売主となる売買契約の場合、「損害賠償額の予定」と「違約金」との合計額が売買代金の2割を超えてはならないと定められている。
入会権(いりあいけん)
入会権(いりあいけん)とは一定の山林原野や漁場に対し、特定地域の住民が、平等利用、収益しうるという慣習法上の権利のことをいう。入会権の設定された場所を入会地(いりあいち)といい、村落共同体等が伐木・採草・タケノコ採取・きのこ採取等で、山林等を共同利用をおこなう慣習的な物権のことで民法上で定められている。さらに入会権は土地だけでなく、入会団体の共同所有物や預貯金についても認められる。
請負
委任契約と違うもの。請負契約にあたっては注文者が請負人に対して内容とする請負契約内容を請負人が完成されることで支払い発生義務が発生する。委任契約と異なる点は委任契約が高度の信頼性が基盤であるのに対して請負契約においては仕事を完遂させることが目的となっている。通常弁護士であれば委任契約であれば建築物を建築する際には請負契約となる。
永小作権(えいこさくけん)
永小作権(えいこさくけん)とは永小作をする権利である。小作人の権利を守る、契約期間が長く設定されている権利である。民法上の物権のひとつであり、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利(第270条)で定められている。永小作権とは抵当権にもなる権利なので、永小作権を担保に住宅ローン借入れも可能である。昨今では永小作権よりも賃借権によって農地の貸与をおこなうことが多い。
SPC法
SPCとはSpecial?Purpose?Companyのことであり、特別目的会社のことである。利益創出を目指した一般の企業とは違い、資産の流動化や証券化等が目的である。企業が保有する資産をSPCに譲渡し、SPCが資産を証券化して資金調達をおこなう。1998年6月に「特定目的会社の証券発行による特定資産の流動化に関する法律(通称SPC法)」が成立したため、SPCを設立する企業が増加した。企業の財務体質の改善が見込まれるが、監査での問題等が噴出している。さらに2001年4月の改正がおこなわれ、すべての財産権を対象とする流動化が可能になった。不動産も同様に流動化できる資産である。
解除条件
不動産の売買契約には停止条件付契約と、解除条件付契約がある。解除条件とは一定の事実の発生することにより契約の効力が消滅する契約のことである。代表的な例ではローン特約等があり、銀行にローンの申し込みが通らず不成立になった場合、売買契約を白紙に戻すことができる等がある。解除条件付契約とよく混同されがちなのが停止条件付契約である。停止条件付契約は一定の条件が発生することで契約の効力が消滅する契約である。
解約手付
手付金は、証約手付、違約手付、解約手付という3つが基本である。一般的には解約手付が主流であり、解約手付は手付の放棄等によって、任意で契約解除ができることが民法第557条第1項で定められている。買主が契約の際に手付金を支払い、買主が自己都合で解約する場合、この手付金を放棄するだけで解約となる。または交付を受けた側が倍返しすることにより、契約解除が可能である。
確定日付
変更のできない確定した日付のことを、確定日付という。法的な効果を求める場合は作成日付が必要である。公証人が私書証書に日付がある印章を押印したもの、つまり公正証書は確定日付のある証書と定義できる。確定日付があることにより、法律上の日付の正当性を保証することができるので、債権の譲渡等のケースの場合は債権者から債務者への通知に確定日付が必要となる。
仮処分
不動産購入者が不動産引き渡し・登記を求めているにもかかわらず、売主が応じない場合や、金銭債権以外の場合、本来は訴訟による強制執行で解決を目指すが、判決を受けるまでの間に、売主がその不動産を他へ売却してしまうと強制執行ができなくなることがある。仮処分は処分禁止を求める手続きのこと。裁判所に申し立てると仮処分命令を出して、登記簿へ記入するように登記所に嘱託してくれる。
求償権
求償権とは住宅ローン等の債務において、債務者の債務を弁済した者、つまり連帯債務者や保証人が、その債務者に対してもつ返還請求権のことである。保証人が債務者に代わって債務返済をした場合は保証人が債務者に対して求償権をもつことになる。償権には一定期間権利を行使しなければ、権利そのものが消滅してしまう制度である消滅時効が一般的には存在している。住宅ローンの返済が不可能になり、期限の利益喪失した場合、銀行等は保証会社に対して代位弁済を請求する。求償権の範囲で住宅ローンの債権・担保物権は、保証会社に移る。
共有物分割
共有物分割とは、動産や不動産を2人以上で共有している状態を解消することである。民法では256条から262条までに規定が定められている。不動産登記において共有物分割禁止の定めは登記事項とされている(不動産登記法59条6号)。不動産が競売にかかるケースとして共有物分割請求は非常に多い。日本の民法は単独所有が原則であるので、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができると民法256条1項本文で定められている。
空中権
空中権とは空間利用権のことである。土地の所有権、賃借権、地上権、地表等上下含めて支配する権利のことである。空中権は地上権であり、権利は土地所有者との契約で設定される物権である。土地の上空の空間の一部を使用する権利、未利用の容積率を移転する権利とふたつの意味がある。後者は都市空間を有効に活用することを目的にして、アメリカで法制化されたものである。2000年、日本においても特例制度が新設され、隣接地等で容積率を譲渡することが可能になった。
建ぺい率
建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合のことである。建蔽率とも書くが常用漢字ではない難しい漢字になるので平仮名が一般的である。対象である敷地にどれほどの規模の建物が建設可能かという基準になる。また、建物を建てる際に、どれくらいの空き地を確保する必要があるのかという割合のことでもある。建ぺい率=建築面積/敷地面積である。
債務不履行
債務不履行とは、債権と債務との関係において債務が履行されない状態のことである。よくある例では売買契約で代金を支払ったのに売主が物件を引き渡さない場合であり、これは売主は引渡し義務を怠っていることになるので債務不履行にあたる。民法第415条により債務不履行に対しては債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができる。ただし、損害賠償請求には債務者が債務を履行しないこと、債務者に故意または過失があること、債務不履行を正当化するような法律上の理由が存在しないことといった3つの条件を満たす必要がある。
土地基本法
土地基本法とは国土利用に関する法律のひとつである。土地の公共福祉の優先、土地の適正な利用及び計画に従った利用、土地の投機的取引の抑制、価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担という4つの基本理念が土地基本法には掲げられている。土地に関する施策の基本となる事項を定めることで土地利用の適正化、正常化、適正な時価取引の形成等を推進するのが目的である。
賃借権と(ちんしゃくけん)
賃借権と(ちんしゃくけん)は賃貸借契約に基づき賃借人が目的物を使用収益できる権利である。賃料等を設定しない無償の賃借は使用貸借と呼ばれる。債務不履行で競売で住居所有者変更がおこなわれた場合であっても、賃貸借契約をしている登記した住人は賃借権によってその利益を守られる(要は追い出されるわけではない)。しかし当然のことだが、賃貸借契約に基づく家賃支払い等が守られている場合に限る。賃借権には自由譲渡性はなく、財産権のひとつになる。
賃貸借(ちんたいしゃく)
賃貸借(ちんたいしゃく)とは(民法601条)「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」とされている。要は賃料をもらい、物を貸す契約のことであり、貸す側を「賃貸人」、借りる側を「賃借人」とする。任意売却によって新所有人になった場合は、賃借人との賃貸借契約を引き継ぐ。
保証人
保証人とは人的担保の一種で、債務者がその債務を履行しない場合にその履行をする責任を負う契約を債務者と交わしている者のことである。特約のない限り債務者が元々負っていた債務のほか、利息、違約金、損害賠償等、その債務に従たるすべてのものの責任を負うこととなる。また、保証人のうち、債務者とまったく同じ義務を負う保証人が連帯保証人である。
不動産質
不動産質とは不動産に質権を設定することである。不動産質権の存続期間は10年以内であり、存続期間終了時には10年以内の期間で更新する。不動産質権者(不動産質権を取得した債権者)は不動産を使用収益し利益を得ることが可能だが、債権の利息を債務者に請求することが不可能である。しかし民法第356条から第359条に設定されている「当事者がこれと異なる特約をした場合」には特約が優位になる。
抵当権者
抵当権については民法369条1項に定められており「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」とある。債務不履行になった場合、貸金を他の債務者に優先して弁済を受けることのできる権利を持つのが抵当権者である。住宅ローンを組むと、抵当権を金融機関等によって登記される。抵当権設定者はローンを借りる人、つまり土地の所有者であり、債務者である。抵当権取得者は金融機関等にあたり債権者になる。
調停
調停とは何かしらの紛争があった場合に当事者以外の第三者が介入することにより当事者間の合意を形成することをいい、債務整理の手法のひとつである。債権者と債務者との間に簡易裁判所の調停委員が、借主と貸主その他の利害関係人等の間を仲介して債務の返済方法及び債務額を見直す。返済条件の軽減等の合意等を目指し、経済的に債務者が立ち戻れるように支援するための手続きである。任意整理のように弁護士や司法書士に依頼する必要はない。
宅地建物取引主任者
宅地建物取引主任者とは、土地や建物の売買取引等をおこなうために必要な宅地建物取引業法に基づき制定された国家資格である。不動産売買・賃借時に重要な事項を相手方に説明する専門家で、創設当初は「宅地建物取引員」という名称であった。宅地建物取引主任者は、重要事項の説明、重要事項説明書への記名押印、契約内容記載書への記名押印が主な仕事となり、またこれらは不動産業を営む上でなくてはならないものである。
セットバック
セットバックとは建物の上部を下部よりも後退させることである。また、二項道路に接している敷地で、道路の境界線を後退させることでもある。セットバック部分は道路として見なされ、セットバック部分に建物を建築することはできない。道路の中心線から2mの位置が敷地と道路との境界線とみなされるからである。敷地面積(建ぺい率・容積率の計算のもと)として含めることも不可である。不動産の広告等ではSBというふうに面積表示されている。
筆界特定制度
筆界(ひっかい)とは表題登記のされている一筆の土地、および隣接する土地との線であり「公法上の境界」である。土地の所有者として登記されている人等の申請に基づき、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、現地における土地の筆界の位置を特定する制度が筆界特定制度である。土地の所有権がどこまであるのかを特定することを目的とするものではない。境界という言葉は所有権の範囲を画する線という意味で用いられるため筆界とは概念が異なるので要注意である。