2020年4月現在、マンションの建て替え工事が完了した事例はわずか「254」。これほどまでにマンションの建て替えが進まない理由は、管理組合がクリアすべき課題が山積みだからです。
今回は、マンション建て替えの流れや関連法を解説しながら、どんな部分がハードルとなって建て替えが進まないのかを見ていきたいと思います。
マンションの寿命と建て替え
まず気になるのは、「マンションはどれくらいで建て替えに必要になるのか?」ということではないでしょうか。
ただ結論からいえば、マンションの寿命は、立地や建築時期、規模、管理・修繕状況などによって大きく異なります。
またマンションの建て替えには、住人の合意形成から実際に建て替えるまでに数年間を要するものです。「築〇年になるから建て替えを検討しよう」ではなく、耐震性能や劣化の度合いを調査し、適切な時期に、時間的余裕を持ったうえで、建て替えを検討し始めなければなりません。
マンションの建て替えができない?事例が圧倒的に少ない理由
(出典:国土交通省)
これまでにマンションの建て替えが実施されたのは、全国でわずか「254棟」。これは、全国にあるマンションの1%にも遠く及びません。
これだけ建て替え事例が少ない背景には、そもそも築50年、築60年を迎えたマンションが少ないこともあげられますが、建て替えを実施するハードルが高いということが最も大きな理由だといえるでしょう。
- 住人の合意形成ができない
- マンション建て替えには一時金がかかることも
- 住人の高齢化や住戸の空き家かにより話が進まない
後述しますが、マンション建て替えにはこのようなことが大きな足かせとなるのです。
マンション建て替えの流れ
マンションを建て替えるまでの工程は、まず修繕か建て替えかの方向性を決めるところから始まります。
1.老朽度の判定
専門家がマンションの状態を診断しない限り、建て替えるべきか?修繕で大丈夫なのか?といった判断はできません。
- 構造安全性
- 防災性
- 居住性
- 設備水準
- 配管部の劣化
- エレベーターの有無
これらのことを客観的かつ専門的に調査したうえで、老朽度を判定します。
あわせて、客観的なことのみならずマンションに暮らす住人の不満やニーズも把握していかなければなりません。
2.建て替え構想と予算の策定
建て替えが必要だと判断された場合、続いて「建て替え構想」を策定していきます。
このあとの「建て替え決議」に向け、住人の合意を得られるような構想を練らなければ、建て替えの実施はできません。この時点では「構想」の枠を出る必要はありませんが、概略な工事内容を設定する必要があります。
建て替え後のマンションは、基本的に、現在の法律に合わせて建築しなければなりません。現状、マンションの容積率が現行法を超過していたり、都市計画・建築規制上、既存不適格であったりする場合は、各住戸の面積を減少させるなど対応策を考える必要があります。
3.建て替え決議
建て替え構想とその予算が出そろった段階で、「建て替え決議」がとられます。
建て替え決議では、基本的に住人の4/5以上の賛成が得られなければ建て替えの実施が決定できません。
建て替えに際しては、住人が1,000万円単位の費用を負担しなければならないケースも多くあります。
そのため「費用負担するのが現実的ではない」「転居したくない」という住人の同意が得られず、身動きが取れないマンションが多く存在しているのです。
4.建て替え組合設立~建て替え
(出典:国土交通省)
建て替え構想および予算案が決議されれば、建て替え事業の主体となる「マンション建て替え組合」を設立します。
建て替え組合が中心となって建て替えを進めていくわけですが、実際に建て替えるまでには反対住人への売り渡し請求や権利変換計画の決定、マンションの権利の移動など、やるべき手続きは山積みです。
もちろん管理会社や建設会社のサポートは入りますが、重要な決定を次々にしていかなければならない状況が長く続くため、建て替え組合の負担は非常に大きくなります。
マンション建て替えに関する法律
マンションの建て替えは、次の2つの法律のもと進めていくことになります。
建物の区分所有等に関する法律
「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」とは、複数の世帯が1つの建物に暮らすうえでの所有関係やルールを明確にした法律です。
マンションの建て替えでは、「建て替え決議」が区分所有法に則って行われます。
マンションの建て替え等の円滑化に関する法律
建て替え決議が採択され、実際に建て替えに向けた手続きを取るときには「マンションの建て替え等の円滑化に関する法律(マンション建て替え法)」に則って進めていくこととなります。
マンション建て替え法は2014年に改正されており、耐震性不足のマンションに限り容積率の緩和が認められるようになりました。
容積率が緩和されれば、今より大規模なマンションが建てられるため、建て替えに伴う住人の費用負担が下がる効果が見込めます。
また2020年にもマンション建て替え法は一部改正されており、「耐震性不足」のみならず防災性不足や危険性が大きいと判断されるマンションにおいても、容積率緩和の対象となりました。
マンション建て替えは関連法の改正が近年、相次いでいます。傾向としては、老朽化しているマンションの建て替えや敷地売却しやすいようになってきてはいるものの、同時にわかりにくさが増しているともいえるでしょう。
マンション建て替えに係る「セカンドオピニオン」の勧め
マンションの建て替えには、構想や予算の算定、建て替え決議……と、実際に建て替えを実施する以前のハードルが非常に高いといえます。
またマンション建て替えに関わる法律は、近年、改正が相次いでおり、これもまた建て替えをわかりにくくしている要因の一つかもしれません。ただ実際には、マンションの建て替えをしやすくするための法改正です。
弊社、不動産あんしん相談室は、マンション建て替えに関するセカンドオピニオンサービスを実施しています。わかりづらい法律の知識、建て替えの構想、ご予算について、客観的かつ専門的、そしてわかりやすい説明をさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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