- これからも誰も住む予定はないけれど、思い入れがあってなかなか手放せない
- 遠方にあるから売却手続きが面倒
- 売りたいけど売れない
このような理由で空き家をそのままにしている方もいらっしゃるかと思いますが、実は、空き家の所有には大きなリスクがあるのです。
“リスク”とは、まず税金面。空き家の所有を続けていると、土地の固定資産税が上がるおそれがあります。また昨今のコロナショックにより、空き家が手放しにくくなっていることもリスクの1つだといえるでしょう。
本記事では、空き家の所有を続けることで生じうるリスクと、“withコロナ”時代に空き家を手放すための方法について解説します。
空き家を所有し続けると税金が上がる可能性が
人が住んでいようがいまいが、不動産には例外なく「固定資産税」が課税されます。ただ不動産の用途によって固定資産税の優遇措置があり、住宅の建つ土地は、「住宅用地の特例」が適用になることで以下のように税額が優遇されています。
※「都市計画税」は市街化区域内の土地・建物のみ課税。
空き家の「住宅用地の特例」が撤廃されるタイミング
住宅用地の特例は、「空き家だから」という理由で除外されるわけではありません。除外される空き家は、「管理不行き届き」と判断された空き家のみ。
具体的にいえば、空き家対策特別措置法に則って 「特定空き家」に指定されたのち、行政からの“指導”に従わなかった場合です。
国土交通省により、以下のように「特定空き家」の判断基準のガイドラインが示されています。
- そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
(例:建物の著しい傾斜・主要部の損傷など) - そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(例:ごみの放置による臭気や小動物の発生など) - 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(例:多数の窓ガラスが割れたまま放置されているなど) - その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(例:立木が道路にはみ出しているなど)
特定空き家に指定されると、助言・指導・勧告・命令の順で、行政から現状の改善が指示されます。改善が認められた時点で行政からの指示はなくなり、特定空き家の指定も解除されます。
先述通り、住宅用地の特例が撤廃となるのは「指導」に背いたタイミング。「勧告」のときに、住宅用地の特例除外が通告されます。もし「勧告」にも従わず、続く「命令」にも背いた場合には、50万円以下の過料が課せられ、最終的には空き家の全部、あるいは一部が強制撤去(行政代執行・略式代執行)されます。
実質的な増税を回避するには空き家の適正管理がもとめられる
(出典:総務省行政評価局)
特定空き家に対する指導等の数は、年々、増加傾向にあります。
固定資産税の実質的な増税や、過料、行政撤去を回避するためには、なによりも「特定空き家」に指定されてないことが大切です。
上記の「特定空き家の基準」を見てみると、ごみの放置や立木の道路越境など、どんな空き家でもちょっと目を離したすきに起こりかねない事象が含まれています。
人が住まなくなった空き家は、定期的な清掃や草木の剪定などによる“維持”が求められます。さらに周囲に危害を及ぼさないためには、近年多発するスーパー台風やゲリラ豪雨、また大地震への“備え”も必要になってくるでしょう。
空き家売却時の税金控除
そもそも、特定空き家への実質的な“処罰”を与える空き家対策特別措置法が制定された背景には、深刻化する空き家問題があります。
(出典:総務省統計局)
空き家数そのものの増加とともに危惧されているのが、管理不行き届きの空き家の増加です。空き家を所有している方ならおわかりかと思いますが、相続したり、遠方にあったりする空き家は、なかなか満足な管理ができません。2015年の空き家対策特別措置法制定は、空き家所有者へ適正管理を求めるためのものなのです。
さらに、空き家問題の深刻化を受けて、空き家売却時の税制優遇制度も開始しています。
相続空き家の3,000万円特別控除とは?
空き家売却時の、譲渡所得(≒売却益)の控除制度として、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(通称:相続空き家の3,000万円特別控除)」が2016年にスタートしました。
不動産売却で出た譲渡所得には、下記税率の所得税と住民税が課税されます。
※「所有期間」は売却する年の1月1日時点
たとえば、所有期間5年超の不動産の売却で1,000万円の譲渡所得が出た場合の所得税額は、「1,000万円×15.315%=153.15万円」。住民税額は、「1,000万円×5%=50万円」となります。
相続空き家の3,000万円特別控除は、譲渡所得を最大3,000万円まで控除できる制度。上記の例は1,000万円の譲渡所得なので、当該制度が適用となれば全額控除され、住民税も所得税も非課税とすることができます。
相続空き家の3,000万円特別控除の適用要件
相続した空き家の売却時に、非常に大きな控除が見込める「相続空き家の3,000万円特別控除」ですが、適用要件に注意が必要です。
まず適用となるのは、相続した空き家を相続から3年後の年末までに売却した場合に限られます。
さらに、こちらの控除制度も空き家対策特別措置法と同様に、空き家を減らすため、また空き家の維持・管理を促すために制定されたものです。そのため、売却する空き家の築年数や状態にも、以下のような適用要件が設けられています。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分マンションは適用外
- 耐震性がない場合は耐震リフォームするか解体して更地にして売却
その他の適用要件等は、国税庁HPをご参照ください。
空き家売却の手順や費用
適正管理が難しく、今後、誰も住む予定がない空き家は、早期に手放すことをおすすめします。
さらに、昨今の新型コロナウィルス蔓延に伴う経済危機は、これからどんどん深刻化していく可能性があります。不況の折には、不動産は売れにくくなるもの。需要が低い空き家はとくにその傾向が強くなることも予想されます。
また不況だからこそ、維持・管理にかけるお金をなくすため、まとまった現金を確保するため、今、売却をおすすめするのです。
空き家売却の手順
空き家にかかわらず、不動産は、不動産会社に「仲介」してもらって売却するのが一般的です。まずは不動産会社に売却査定を依頼し、いくらで売れそうかを把握しましょう。
不動産会社は、不動産が売れた後に売主から受領する仲介手数料が唯一の収入減であるため、売れない見込みの不動産を売ることには躊躇するもの。とくにコロナウィルスの影響によって今後しばらく不動産の動きが鈍ることが予想される中、報酬が少ない空き家を積極的に仲介しようとは思わないでしょう。
では、不動産会社に売却を断られてしまった空き家はどうすればいいのでしょうか?
方法の1つとして、各自治体が運営する「空き家バンク」があります。耳にされたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
■市区町村の空き家バンクの成約件数
(出典:一般社団法人移住・交流推進機構)
ただ実は、空き家バンクの仕組みは、“販促”というより“紹介”や“掲載”によって「買いたい人に見つけてもらう」に過ぎず、成約件数が少ないというのが現状です。
断られた・売れない空き家は“買取”による売却を検討する
不動産会社に売却を断られた…売り出しているけど一向に売れる気配がない…という空き家は、不動産あんしん相談室にお気軽にご相談ください。
当相談室では、売却に伴う不安や悩みを解決するのみならず、自ら不動産を買い取らせていただくことも可能です。
「仲介」による売却は、いつ売れるかわからず、いつまで経っても売れない可能性もありますが、当相談室による買取なら最短1週間。「あんしん買取net」なら最短2週間で、売買が成立します。
当相談室は、「売れない」「訳あり」「複雑」…などのトラブルを抱えた不動産の売却をサポートする一般社団法人。
不動産会社に断られた物件も、これまで多く取り扱ってきました。空き家が売れない理由が、「相続人同士の協議がうまくいかない」「共有者の同意が取れない」という場合にも、弁護士や司法書士などの専門家と提携してトラブル解決を目指します。
空き家売却にかかる費用
売却前には、空き家の売却にいくらかかるのかについてもしっかり把握しておきましょう。
不動産会社に仲介してもう場合には、仲介手数料が必要です。
当相談室が直接買い取る場合には「仲介」にあたらないため、仲介手数料は不要です。ただし、「あんしん買取net」は、当相談室が第三者の買取業者とお客様とを仲介させていただく形になりますので、仲介手数料と司法書士報酬(1~3万円)のみ頂戴いたします。入札手数料等は、不要です。
また「仲介」「買取」問わずかかる費用としては、次のものがあげられます。
- 売買契約書に貼付する印紙税(売却金額5,000万円以下であれば1万円以下)
- 空き家売却と同時に住宅ローンを完済する場合、抵当権抹消費用(3万円前後)
まとめ
誰も住まない・住む見込みのない空き家の所有を続けると、固定資産税の実質的な増税や過料などのリスクがあります。またスーパー台風やゲリラ豪雨などの自然災害が増えた昨今では、空き家が誰かを傷つけてしまう可能性についても考えなければなりません。
空き家の売却には、それほど高額な諸費用が必要になるわけではありません。売却後には、大きなリスクも、大きな負担もなくなります。本格的な不景気がやってくる「今」このときに、空き家を手放すことを検討してみてください。