国土交通省によると、平成30年末時点のマンションストック総数は、およそ654.7万戸。この内、築40年を超えるいわゆる「老朽化マンション」の数は、総数の約1割となっています。
しかし10年後には、老朽化マンションの数は今の約2.4倍に。20年後には、約4.5倍にもなる見込み。日本におけるマンションの歴史はまだ浅いので、老朽化マンションの問題が明るみに出て、深刻化してくるのはこれからなのです。
老朽化したマンションはどうなるのか?というと、所有者が取れる選択肢は次の3つです。
- 建て替え
- 修繕
- 売却
老朽化マンションの国による対策
(出典:国土交通省)
日本に“マンション”が登場したのは、1950年以降と比較的、近年のこと。そのため現時点で「老朽化のため建て替えた」「取り壊した」という例は、まだまだ少数です。
しかし1970年代以降、日本にはマンションブームが到来。今後、築40年、50年を迎えるマンションは爆発的に増えていく見込みとなっています。
「マンション建て替え法」を改正
2014年には、南海トラフ地震や首都直下型地震などの巨大地震を懸念し、旧耐震基準で建てられたマンションの建て替え制度を緩和しています。
マンション建て替え法ともいわれる「マンション建て替え円滑化法」の改正ポイントは、次の2つです。
①マンション敷地売却制度の新設
従来まで、マンションの敷地売却は住人全ての意思が必要でした。それが改正により、4/5以上の賛成でマンションとその敷地の売却が可能になっています。
②容積率の緩和
建て替えによって新たに建設されるマンションは、一定の要件を満たしていれば、容積率制限が緩和されることに。つまり、建て替え後のマンションの戸数が増えることにより、資金面でもマンションの建て替えを容易にしたということです。
敷地売却からの建て替えをさらに容易に
2019年8月の日経新聞では、国土交通省が老朽化マンションの建て替えを促すため、敷地売却のルールを緩和する方針にあると報じています。
国土交通省は老朽マンションの建て替えを促すため、敷地売却のルールを緩和する方針だ。現在は耐震性不足が認定された場合のみ所有者の8割以上の賛成で売却可能だが、外壁や配管などが劣化した危険な物件も同条件で対象に加える。
(引用:日経新聞)
2014に改正した制度では、マンションの敷地を売却してマンションの建て替えをする場合、マンションの耐震性不足の認定と、住人(区分所有者)の4/5以上の賛成が必要です。
しかし1981年6月以降に建てられた新耐震基準を満たすマンションも今後は老朽化が避けられないことから、 “耐震性不足の認定“の箇所の緩和が検討されています。
国としては、耐震性のみならず、外壁や配管等の劣化が顕著に見られたり、住人の意思があったりする場合には、“建て替えを促したい”というのが老朽化マンションに対する基本的な方針です。
老朽化マンションを所有し続けるとどうなる?「修繕」VS「建て替え」
国としては、“老朽化マンションの建て替え”を促したい考えですが、収益マンションを所有する人からすれば、いつ建て替えるべきなのか?修繕でも対応可能なのか?気になるところではないでしょうか。
修繕するメリット・デメリット
修繕のメリットは、なんといっても建て替えより費用が抑えられる点でしょう。ただやはり、修繕は措置にすぎず、建て替えまでの期間を延ばすだけのものともいえます。
とくに今“老朽化予備軍”であるマンションは、マンション管理が制度化されていない時代を経ているため、過去に定期的に大規模修繕が行われていない可能性もあります。
マンションの管理は継続的に点検・修繕をすることが重要である以上、老朽化してからの修繕は、応急処置にしかすぎないのです。
収益マンションは、築年数が経過するごとに賃料収入は減っていくのが基本。老朽化を前に費用をかけて大規模修繕した場合、その経費が回収できない恐れもあります。
建て替えるメリット・デメリット
老朽化マンションを建て替えるメリットは、今後、設備不良や耐震性などの心配がなくなり、建て替え後は賃料収入や需要が上昇することに期待できる点でしょう。
とはいえ大規模修繕以上に莫大な費用がかかる点や、住人を退去させなければならない点はやはりデメリットだといえます。
- 建て替えにかかる費用
- 住人を退去させるための費用
- 建て替え中は収入なし
これらのことを考えると、建て替え後によほどの収益が期待できる立地や環境があり、なおかつ融資が受けられること、さらにその他の収入源があることなど、建て替えには様々な条件が必要になります。
老朽化マンションを売却するという選択肢
利回りが落ちてきて、これから修繕するにも建て替えるにも多大な費用がかかる老朽化マンションやその予備軍は、早めに手放すことを考えてみましょう。
“早めに”手放すべき理由
築40年、50年…と老朽化しきってしまった不動産は、なかなか買い手がつきません。当然ながら、買い手はすぐに修繕や建て替えのことを検討しなければならないからです。
土地値での売却になったとしても、老朽化した収益物件が建つ場合は、解体や再建のための費用がマイナス分として加味されてしまうことが考えられます。
不動産としての価値がある状態で売ることができれば、売却価格には大きな差が生じるでしょう。
収益物件を売却して買い替えするメリット
収益物件を売却して一定期間内に特定の地域内の資産を購入し、1年以内に事業を始めれば、事業用資産の買い替え特例が適用となり節税になります。
収益物件に限りませんが、不動産売却時の譲渡所得に課税される住民税・所得税の税率は非常に高いもの。5年超の長期保有だとしても、その税率は20%以上にも及びます。
買い替え特例は、譲渡益の80%を将来に繰り延べられるというものです。
譲渡益に対する課税率を買い替え時に引き下げることができるということは、買い替え先としてより好条件の物件もが選べるということにもつながります。
買い替え特例は、時限立法。延長される可能性もありますが、現状、制度が適用になるのは2020年3月31日までの譲渡です。
空室が目立つマンションは「買取」の検討を
収益物件で怖いのは、売りたいと思ったときに売れないこと。売り時を逃してしまって老朽化が進むと、修繕や建て替えするお金もない!空室も目立つ!売れない!という八方ふさがりのような状況に陥ってしまいます。
- 売り時を逃してしまった
- すぐに売りたい・買い替えしたい
- 確実に売りたい
こんな時に適している売却方法が、「買取」です。
買取とは、不動産業者に“仲介”してもらうのではなく“直接買い取ってもらう”ということ。買主が業者になることで、早ければ1ヶ月以内に資金化することが可能です。
まとめ
老朽化マンションは、今後、増加し続けます。それと逆行するように日本の人口は減り続けていきますから、借主・買主の目には条件の良い物件しか留まらなくなるでしょう。
老朽化して見向きもされなくなる前に資産を組み換えることが、この時代を生き抜く賢い不動産投資方法だといえます。
当相談室では、不動産売却はもちろん、買取まで対応。収益物件の出口戦略についても、専門性の高い担当者がアドバイスさせていただいております。
今いくらで売れるか知っていただくためにも、ぜひ無料の不動産査定からご活用ください。