結論:持ち家があっても、生活に困っているなら生活保護の相談・申請はできます。居住用の持ち家は、資産価値や世帯状況などによって保有が認められる場合があります。一方、住宅ローン返済中の家は、保護費が資産形成に使われることになるため、原則として保護の適用が難しいとされています。
重要なのは「家を売ってからでなければ相談できない」と思い込まないことです。食費・医療費・住まいに困る状況なら、まず自治体の福祉事務所へ相談してください。同時に、住宅ローンや借金がある場合は弁護士、家の価格と残債は不動産会社へ確認します。
緊急性が高い場合の順番
①福祉事務所へ生活保護を相談・申請 → ②弁護士へ債務整理を相談 → ③査定価格と住宅ローン残高を確認 → ④関係者と売却・保有の方針を決定
自己判断で家族へ名義を移したり、相場より安く売ったり、一部の債権者だけへ返済したりすると、自己破産手続で問題になる可能性があります。売却や返済の実行前に専門家へ確認しましょう。
持ち家があっても生活保護は申請できる
厚生労働省は、生活保護では利用できる資産を生活維持のために活用することが要件である一方、居住用の持ち家は保有が認められる場合があると案内しています。「持ち家がある人は一律に申請できない」という説明は正確ではありません。
持ち家の保有が検討される主な事情
- 現在、本人や家族が生活の本拠として住んでいる
- 処分価値が利用価値に比べて著しく大きくない
- 高齢・病気・障害・家族構成などから転居が適切でない
- 売却しても生活再建に使える資金が多く残らない
- 住宅ローンが完済している、または返済問題を別途整理できる
実際の判断は福祉事務所が個別に行います。地域や世帯の事情によって対応が異なるため、査定書や住宅ローン残高を持参して相談します。
住宅ローンが残る持ち家は対応が異なる
厚生労働省の実施要領では、ローン返済中の住宅を保有したまま保護を適用すると、生活に充てるべき保護費からローンを返済することになるため、原則として保護を適用すべきでないとされています。
参考:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」
| 持ち家の状態 | 確認すべきこと | 主な相談先 |
|---|---|---|
| ローン完済・低い資産価値 | 保有が認められるか | 福祉事務所 |
| ローン返済中・売却で完済可能 | 通常売却と転居後の住居 | 福祉事務所・不動産会社 |
| ローン返済中・売却しても残債 | 任意売却、残債整理、自己破産の要否 | 弁護士・金融機関・任意売却専門会社 |
| 競売開始済み | 期限、配当要求終期、任意売却可能期間 | 弁護士・任意売却専門会社 |
生活保護と自己破産は別の制度
| 制度 | 目的 | 担当 | 主な結果 |
|---|---|---|---|
| 生活保護 | 最低限度の生活を保障し、自立を助長する | 福祉事務所 | 収入・資産等を調査し、必要な扶助を決定 |
| 自己破産 | 支払不能時に財産を換価して債権者へ配当する | 裁判所・破産管財人 | 破産手続と、別途行われる免責手続 |
| 任意売却 | 完済できない不動産を債権者の同意を得て売却する | 金融機関・保証会社・不動産会社 | 競売前に市場で売却し、残債を整理 |
裁判所は、破産手続を「破産管財人が債務者の財産を金銭に換えて債権者に配当する手続」と説明しています。借金の支払義務が当然に消える手続ではなく、免責許可について別途判断されます。
何から始める?状況別の相談順序
生活費や医療費が足りない場合
売却や自己破産の結論を待たず、福祉事務所へ相談・申請します。厚生労働省は、必要書類がそろっていなくても申請できる旨を案内しています。住む場所がない、食事ができないなど緊急性を具体的に伝えます。
住宅ローンを滞納していないが、今後払えない場合
滞納前に金融機関へ返済条件の相談を行い、同時に家の査定価格とローン残高を確認します。売却で完済できるかによって、通常売却か任意売却かが変わります。
住宅ローンを滞納している場合
督促状、期限の利益喪失通知、代位弁済通知などを確認し、早めに金融機関と任意売却の専門会社へ相談します。詳しくは任意売却の仕組みと相談方法をご覧ください。
住宅ローン以外の借金も返済できない場合
先に家を売ると決めず、弁護士へ債務整理全体を相談します。売却代金の使途や債権者への返済方法が、後の破産手続で問題にならないよう調整する必要があります。
競売開始決定通知が届いた場合
競売には期限があります。通知書一式を用意し、直ちに弁護士と任意売却の専門会社へ相談します。任意売却ができる期間は限られ、金融機関の同意も必要です。
自己破産前に家を売却するときの注意点
「自己破産前に売れば必ず同時廃止になり、費用を抑えられる」とは限りません。手続の種類や予納金は裁判所、財産状況、取引内容などにより異なります。また、破産申立て前の財産処分は申立書で報告を求められることがあります。
弁護士へ相談する前に避けたい行為
- 家族・知人へ無償または著しく安い価格で譲る
- 売却代金を隠す、現金で保管する
- 一部の債権者や家族だけへ優先的に返済する
- 金融機関へ知らせず抵当権付きの家を処分しようとする
- 事実と異なる売買契約書や借用書を作る
適正価格で売却したことを示せるよう、複数の査定、売買契約書、入出金記録、諸費用の領収書を保存します。
家を売却する場合の5つの手順
- 住宅ローン残高を確認:金融機関から残高証明書や返済予定表を取得
- 不動産価格を査定:通常売却で完済できるか判断
- 弁護士へ債務全体を相談:自己破産・任意整理などの必要性を確認
- 福祉事務所へ転居・売却方針を共有:住宅扶助の上限や転居費用の扱いを確認
- 関係者の同意を得て売却:共有者、抵当権者、破産管財人がいる場合は必要な許可・同意を確認
売却方法の比較
| 方法 | 利用場面 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 通常売却 | 売却代金で住宅ローンを完済できる | 仲介手数料・税金・引越し費用を見込む |
| 任意売却 | 売却しても完済できない | 金融機関の同意が必要。残債はなくならない |
| 競売 | 返済が進まず裁判所手続が進行 | 売却時期を選びにくく、情報が公開される |
| リースバック | 売却後も賃貸で住みたい | 家賃が住宅扶助の範囲に収まるか、適正価格かを事前確認 |
リースバックを利用すれば必ず生活保護を受けられるわけではありません。売却価格・家賃・契約条件を福祉事務所と弁護士へ事前に確認してください。
相談時に準備する書類
- 住宅ローン返済予定表・残高証明書
- 督促状、代位弁済通知、競売開始決定通知
- 不動産の登記事項証明書・固定資産税通知書
- 不動産査定書
- 預金通帳、給与明細、年金・手当の通知書
- カードローンなど全債務の明細
- 健康状態・家族構成・毎月の家計が分かる資料
よくある質問
持ち家があると生活保護を申請できませんか?
申請できます。持ち家を保有できるか、売却・活用を求められるかは、資産価値や世帯状況などを福祉事務所が個別に判断します。
借金があると生活保護を受けられませんか?
借金があることだけで申請できないとは限りません。ただし、保護費を借金返済へ充てることは想定されておらず、債務整理を求められることがあります。弁護士へ相談してください。
生活保護を受けながら住宅ローンを払えますか?
原則として難しいとされています。保護費から住宅ローンを返済すると資産形成につながるためです。福祉事務所と金融機関、弁護士へ相談します。
自己破産前に家を売ったほうがよいですか?
一律には言えません。適正価格での売却でも、代金の使い方や時期を含めて破産手続との調整が必要です。売却契約の前に弁護士へ確認してください。
任意売却すると住宅ローンはゼロになりますか?
売却代金で完済できない部分は残債として残ります。売却後の返済方法や自己破産の要否を、債権者と弁護士へ相談します。
まとめ|申請をためらわず、売却は専門家と順序を決める
- 持ち家があっても生活保護の相談・申請はできる
- 居住用の持ち家は保有が認められる場合がある
- 住宅ローン返済中の家は原則として別途整理が必要
- 家の売却や名義移転、一部債権者への返済を自己判断で行わない
- 福祉事務所・弁護士・不動産会社が情報を共有して順序を決める
住宅ローン残高と家の価値を確認し、弁護士などと連携して整理します
不動産あんしん相談室では、通常売却・任意売却・リースバックの可否を査定し、必要に応じて連携する弁護士等と解決順序を整理します。競売通知が届いた方も早めにご相談ください。








