「家族信託」をご存じですか?
家族信託とは、老後や相続に備え、資産の管理や運用を家族に託すための契約。自宅を含めた不動産を所有している方や中小企業の経営者の方は、今後のために知っておいて損はない制度です。
本記事では、家族信託のメリットや流れ、費用について解説します。
家族信託とは
家族信託とは、資産のうち「管理・運用する権利」だけを受託者に託すという信託契約です。
家族信託は、2006年の信託法改正によって翌2007年からスタートした制度。従来までは、親から子に不動産を管理・運用する権利を譲渡するには、所有権ごと移す「生前贈与」が一般的でした。しかし、生前贈与では所有権や家賃収入などを得られる受益権も移行するため、高額な贈与税がかかるなど税金面でデメリットがあります。
家族信託の4つのメリット
続いて、家族信託はどんな場面で効果的なのか見ていきましょう。
1.認知症等を発症しても資産の管理や売却が可能
不動産などの資産は、意思能力が欠如している状態では売却や所有権の移行ができません。認知症などを発症した場合も同様です。
しかし、家族信託を締結していれば、委託者が資産を託した「受託者」により売却等が可能です。
2.「成年後見制度」より柔軟
意思能力が欠如している方を援助する制度として「成年後見制度」があります。この制度によって家庭裁判所から選出された後見人は、被後見人の不動産の売却も可能です。
しかし“柔軟性”でいえば、成年後見制度より家族信託のほうが上だといえます。
たとえば、成年後見人は、自らの意志で被後見人の不動産の売却もできるものの、自宅など被後見人にとって健康的な心身を保つために重要だと考えられる不動産については、売却までに家庭裁判所の許可が必要です。一方で、家族信託は委託者の自宅売却も自由にできます。
そもそも、2つの制度は趣旨が異なります。成年後見人は被後見人を“援助”し、資産を守る人ですが、家族信託における受託者は資産を“託される”人です。成年後見人より、大きな裁量を与えることができます。
3.「遺言」の役割も担う
家族信託には「遺言」の効果もあります。家族信託は、生前には資産を管理・運用する権利を家族に信託しますが、亡くなった後に受益権を継がせる人を定めることも可能です。
「資産を管理・運用する権利」と「利益を得る権利」を引き継ぐということは、資産を引き継ぐということ。つまり、家族信託は遺言と同様の役割を担うこともできるというわけです。
生前対策というのは、先述のように所有者に意思能力の欠如が見られるようになっても、受託者が資産の管理・売買・運用ができるようにしておくということですね。
そして二次相続というのは、たとえば長男に相続したあとに、長男の長男(孫)に相続させる……このように、次世代以降の資産継承に関する取り決めも可能だということです。
4.スムーズな事業承継にも
- 生前対策
- 遺言効果
- 二次相続以降の承継先の指定
この3つが可能な家族信託は、事業承継対策にも効果的です。
家族信託は、不動産などの資産の受益権・所有権を残しながらも、管理・運用する権利のみ譲渡することが可能だとお話しました。
同様に、事業においても、株式そのものを譲渡しなくても「議決権」のみを後継者に移すことが可能です。生前に株式を譲渡するとなると、贈与税の問題もあります。さらに、後継者の裁量を見極める時間も必要でしょう。
家族信託を利用すれば、贈与税を掛けずに、後継者を育成しながら事業承継ができます。また二次相続以降の承継先の指定ができますので、次世代の後継者まで指定することが可能です。
家族信託の流れ
家族信託をするには、適切な工程を経て手続きを進めていかなければなりません。家族間の信託とはいえ「契約」であり、対象の資産が不動産であれば登記も必要です。
Step1.話し合い
家族信託は「契約」ですので、委託者、受託者間の合意が必要です。
家族信託の内容は、家族の中で誰に資産を任せるのかとともに、その後の相続にも影響するもの。委託者、受託者以外の家族ともしっかり話し合っておかれることをおすすめします。
また、株式を信託財産とするには、基本的に取締役会、あるいは株主総会での承認が必要です。ただし、約款で承認者が別に決まっている場合はこの限りではありません。承認者の承認を得ることで信託化が可能です。
Step2.契約書作成
続いて、信託契約書を作成します。
不動産売買などにもいえることですが、契約書自体は自分で作成することも可能です。しかし、自分たちの意図したことを確実に実行できるかは、契約書の有効性と内容次第。いざというときに効力が発生しないことのないよう、契約書の作成は弁護士など専門家の手を借りることをおすすめします。
Step3.契約書の公正証書化
契約書の締結は、契約者同士の「約束」です。法的な効力はありません。そのため、信託契約書は「公正証書」で作成することをおすすめします。
公正証書とは、法律に則って公証人が作成する文書です。法的効力があるため、信託契約においてなんらかのトラブルが発生したときにも、有効な証拠として示すことができます。
Step4.登記
不動産売買と同様に、契約をしただけでは権利は移行しません。不動産の信託契約をした後は、委託者から受託者に名義を変更する信託登記をする必要があります。
一方で、株式を信託する際には登記手続きは不要です。その代わり、会社法に基づき「株式名簿」へ記載します。
Step5.信託口座開設
家族信託によって「資産の受益者」と「管理・運用する人」が分かれるような場合には、信託契約に伴うお金を管理できる口座が必要です。
これは「普通口座」ではなく「民事信託口座」という特別な口座。最近では、信託口座を開設できる金融機関も増えてきましたが、信託契約に関するサービスを提供している機関でしか開設できません。
家族信託にかかる費用
家族信託をするには50万円~100万円の費用がかかります。その内訳と相場は、次の通りです。
専門家のコンサルティング報酬
弁護士や司法書士に家族信託の相談から信託の設計まで依頼するときにかかる費用です。登記手続き報酬なども、コンサルティング報酬に含まれているケースがあります。
相場は、30万円ほどから。「信託財産の金額の1%」が1つの目安になりますが、高額になるほどこのパーセンテージは下がる傾向にあります。
公正証書作成手数料
公正証書作成の基本手数料は、日本公証人連合会で次のように定められています。
(出典:日本公証人連合会)
登記費用
不動産の登記にかかる登録免許税は、固定資産税評価額の0.3~0.4%ですが、司法書士に登記を依頼すると別に報酬がかかります。
なお、司法書士報酬は「コンサルティング費用」に含まれていることもあります。
信託口座開設費用
信託口座を開設するにも、費用がかかります。費用は金融機関によりますが、5万円前後が相場です。
まとめ
家族信託は、投資家や経営者のみならず、一般の方の認知症対策などにも利用される制度です。とはいえ2007年より始まった制度ですので、いまだ周知しきれておらず、専門家も多くないというのが現状です。
不動産あんしん相談室では、家族信託に精通した弁護士や司法書士などと連携して、不動産を活用した生前対策、相続対策をサポートさせていただいております。
検討段階にあるという方も、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
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