相続財産管理人とは、遺産を管理・清算する人です。
しかし、本来であれば遺産を管理・清算するのは相続人。では、相続財産管理人はどんなときに選任が必要なのでしょうか?
本記事では、相続財産管理人の選任が必要なケースと選任の流れ、費用を解説します。
相続財産管理人とは相続人不在の遺産を管理・清算する人
相続した遺産は、相続人が管理し、相続登記によって売却などの手続きを行える権限を持ちます。しかし、相続人が不在の場合においては、遺産を管理・清算する人もまた不在となってしまいます。
そこで選任されるのが、相続財産管理人です。
「相続人不在」とは
相続人がいない状況とは、法定相続人がいないケース、すべての相続人が相続放棄したケースとともに、相続人が明らかになっていないケースも含まれます。
相続人が不明の場合は、相続財産管理人選任後も相続人捜索の公告が出されます。
誰が相続財産管理人になるの?
相続財産管理人に、特別な資格等は必要ありません。しかし、選任するのは家庭裁判所です。
候補者を上げることも可能ですが、必ず候補者が選任されるわけでなく、遺産を管理するにあたって適任だとされる弁護士や司法書士が選任されることも少なくありません。
相続財産管理人を選任する方法
相続人が不在であれば、必ず相続財産管理人が選任されるわけではありません。
選任には、申立てが必要です。
誰でも申立てられるわけではない
相続財産管理人選任の申立てができるのは、利害関係人および検察官に限られます。
利害関係人とは、具体的には以下のような人です。
- 亡くなった人に金銭を貸していた人
- 内縁の配偶者
- 看護・介護をしてきた人
- 特定遺贈(指定された財産)の受遺者
選任を申立てる先は、亡くなった方が最後に住んでいた地域を管轄する家庭裁判所です。
申立てに必要な費用
相続財産管理人の申し立てには、800円分の収入印紙と連絡用の郵便切手、官報公告料4,230円が必要です。
申立てに必要な書類
- 申立書
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書),預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
- 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),金銭消費貸借契約書写し等)
- 財産管理人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票
(出典:裁判所)
相続財産管理人の費用は誰が払う?予納金とは
相続財産管理人を申立てるための費用は少額ですが、申立人は別途「予納金」を納めなければならないケースがあります。
予納金が必要なケース
予納金とは、相続財産管理人の報酬や経費に充てる費用です。
相続財産が十分にあり、債権者への分配や縁故者への分与をしても相続財産管理人の費用をまかなえるケースでは予納金は不要です。しかし、不足している場合には、申立人が予納金を納めなければなりません。
予納金の金額
予納金の金額は、裁判所が決定します。事案によって相続財産管理人の報酬や経費は異なりますので一概にはいえませんが、数10万円~100万円ほどです。
遺産の清算が終わったあとに予納金のあまりがあれば、申立人に返金されます。
相続財産管理人が不動産を売却する流れ
相続財産管理人には、遺産の管理・清算をする役割があります。
清算にあたっては、不動産などの資産の売却をすることもありますが、売却は相続財産管理人の一存で進めることはできません。家庭裁判所の許可が必要です。
相続財産管理人が不動産を売却する流れは、以下の記事でまとめています。
まとめ
相続財産管理人の選任には、少なからず費用や労力が伴います。
しかし、しっかりと配分や分与してもらうためには、決して避けて通れない手続きです。遺産の中に換価する不動産がある場合には、少しでも好条件で売却できるよう、体制を整えておくことも重要です。
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