自宅に住みながら老後資金を確保することができる「ハウスリースバック」。今回ご提案するのは、リースバックを相続対策や終活の1つとして考えてみることです。
ご自身の今の生活のため、遺される方たちのため、「自宅」という資産の整理を考えてみませんか?
ハウスリースバックとは
ハウスリースバックは、自宅の売却後に買主と賃貸借契約を結ぶことで、自宅に住み続けながら家を売ることができるという方法です。最近では老後資金捻出のために、高齢者の方が選択することが多くなっています。
自宅の「所有者」から「賃借人」となることで月々の家賃は発生しますが、次のようなメリットがあります。
- 売却金額としてまとまったお金を得られる
- 固定資産税やメンテナンス費用、マンションなら管理費・修繕積立金がかからなくなる
- 引越しが不要なのでライフスタイルの変化がない
高齢者ならとくに、引越しやライフスタイルの変化は避けたいもの。それに加えリースバックは、相続対策や終活の1つとしても近年注目されているのです。
なぜリースバックが相続対策となるのか
「相続対策」といえば、現金を不動産などに変えて相続税対策をしたり、遺言書を用意して相続人が遺産分割でもめないようにしたりする対策のことですよね。
ではなぜ「不動産を資金化する」というリースバックが、相続対策となりえるのでしょうか?
相続人がもめるのをふせぐため
相続財産のほとんどを占めているのが「自宅」の場合、相続人が複数いるとトラブルになる可能性が高くなります。自宅は相続人で共有とすることができますが、1つの不動産を複数人で共有するとなると次のようなことでもめるケースが多いです。
- 持分割合でもめて、遺産分割協議が難航する
- 共有者の中で、「売りたい」「貸したい」「住みたい」など意見が一致しない
- 将来的に共有者の子どもにまで所有権がうつり、権利関係が複雑化する
仲が良かった兄弟姉妹でも、相続を期に仲違いしてしまうということはよく耳にします。原因となるのは、十中八九、分割方法です。
不動産は、共有することで公平感が保たれているようにみえます。しかし実際には一つの家を複数人で所有することは難しく、完全に公平に分割できる現金の相続の方が、格段にもめる可能性は下がります。
資金化したとしても基礎控除内であれば相続税はかからない
現金より不動産の方が、相続税評価額が低くなることは確かです。しかし現金だとしても基礎控除内であれば、相続税はかかりません。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば配偶者1人、子ども2人が相続するときの基礎控除額は、上記の計算式に当てはめると4,800万円となります。加えて配偶者には、1億6,000万円か法定相続分までは無税になる特例が設けられています。
資金化すれば非課税の生前贈与もできる
自宅を生前贈与するとなると、税金がかかります。しかし資金化した上で、現金を贈与する場合には非課税枠があります。
- 年間110万円まで
- 子や孫への住宅資金の贈与(最大3,000万円)
- 子や孫への教育資金の贈与(最大1,500万円)
- 子や孫への結婚資金の贈与(最大1,000万円)
生前に非課税枠をうまく利用すれば、住宅を資金化しても相続時の課税をゼロにすることも可能です。
「終活」の1つとしてリースバックする2つのメリット
リースバックは、「資産整理」することで相続対策ができるということです。
ご自身が亡くなった後のことを考えて、家の中を片付けたり、お墓を用意したり、遺言書を書いたりする「終活」がブームになっていますよね。相続対策のために資産整理するリースバックもまた、終活の1つとして位置づけられるのではないでしょうか?
リースバックで終活するメリットには、次の2つのことが考えられます。
①老後の面倒は自分で見る
リースバックするメリットは、相続対策できることだけではありません。住みながら家を売却するため、生活スタイルを変えずにまとまったお金を得ることこそ最大のメリットだといえるでしょう。
- 年金だけでは老後資金が足りない
- 介護が必要になったときの備えがない
- 趣味や娯楽に費やすお金がない
このような場合、日々の生活や楽しみ、もしものときには、子どもから援助をしてもらわざるをえなくなります。「終活」とは、自分が亡くなった後のことだけ考えればいいものではないはずです。最後まで自分の面倒を自分で見るということは、終活する上でまず考えるべきことなのではないでしょうか。
②相続人に手間を取らせない
不動産を相続するとなると、遺産分割や相続登記、不動産管理など、相続人はやることがたくさん出てきます。現金の相続ならトラブルなく分割でき、面倒な手間いらず。相続人の好きなことにお金も使ってもらえるでしょう。
近年は空き家問題が深刻化しており、相続した実家が「売れない」「貸せない」「住まない」ことで、結果として持て余してしまうケースが多発しています。子どもたちは既に家庭や家を持っていることが多いので、実家を相続しても困ってしまうことも考えられるのです。
まとめ
現金を不動産に変えることだけが、相続対策ではありません。その逆もまた、状況によっては最適な相続対策となりえます。
リースバックは相続対策だけでなく、高齢者の「自立」を後押しできるものです。子どもに頼らず活力ある老後生活を送りたいという方、また親御さんにそうあって欲しいと願うお子さんは、リースバックを検討する価値があるのではないでしょうか?