みなさんこんにちは、不動産コンサルタントの神田(@eco2009_earth)です。
住宅ローンが支払えなくなった際の対応方法として、任意売却の認知が広まってきました。
しかし、どこの会社の説明を読んでも、任意売却についてのメリットしか書かれていないということはありませんか?
本当に任意売却は良いこと尽くしなのでしょうか?
住宅ローンを支払えなくなったら、自動的に裁判所の方から競売へ流れる手続きがありますが、そちらの方が何もしなくて良いので楽なのではないでしょうか?
今回は、誰も言わない任意売却のデメリットについて詳しく解説していきたいと思います。
任意売却後も債権者との関係は続く
任意売却が上手くいったとしても、結局、債権者からは逃げられないのではないか、
そうだとしたら、任意売却みたいな手間のかかることをやるだけムダではないか、
と心配されている方がいます。
この懸念は、半分正解、半分不正解です。
どういうことか説明しましょう。
債権者(さいけんしゃ)とは、債務者に対して金銭の請求を行うことができる人のこと。 住宅ローン、不動産ローンでいえば銀行が債権者となります。
住宅ローンがなくなることはほとんどない
まず、任意売却すれば住宅ローンなどのいわゆる債務は、ゼロになるかというと、ほとんどの場合なりません。
これはどこの不動産業者も書かないので、チャラになると思っておられる方が多いのですが、残念ながら事実です。
そもそも冷静に考えて頂ければおわかりかと思いますが、住宅ローンの残債務が残っている状態というのは、すでにマイホームを購入されて何年も経過されております。
そのため、家の価格は経過した年数分だけ下落しておりますし、かつ住んでおられたなら、損傷もあるでしょうからさらに価値は下がります。
その状態で、売却して残債務がゼロになるというのは、ほとんどの場合ありえないのです。
債権者に追いかけられるわけではない
しかし『住宅ローンがなくならない=債権者に追いかけられる』というのも話ではありません。
任意売却をするには、手間も時間もかかります。
その『手間』と『時間』をかけて何をしているのかと言うと、残債務の減額や無理のない支払い方法について、債権者とタフな交渉をしたり、物件を購入してくれそうな人を探す仕事などを行っております。
そこで債権者との合意をしっかり取り付けることで、債務は残りますが、継続的にちゃんと支払いを続ければ『追いかけてくる』ということはありません。
また、善良な任意売却の業者ならその後の生活を安定させながら、無理のない返済方法のアドバイスも行ってくれるはずです。
債権者との関係を良好に保つためでもある
しかし、任意売却を行うことで『タフな交渉』と『減額についての合意』を取り付けるとなれば、債権者との関係の悪化は避けられないのではないか?
そう心配される方もおられます。
確かに、債権者の心象が良いとは言えないでしょう。
しかし、それは債権者に対して相談もせず、競売に流れるまで放置している方が、任意売却を行うために誠意を持って相談するよりもずっと心象が悪いでしょう。
つまりは、住宅ローンが支払えなくなった時点で、さらに言えば、支払いが困難になり始めた時点のように、債権者と相談する時期が早ければ早いほど心象の悪化は防げます。
任意売却後は住宅ローンを借りられないのか
住宅ローンは、継続的に毎月返済するという信頼関係があるからこそ成り立つ制度です。
そのため、住宅ローンが支払えなくなり、任意売却という結果になれば、その信頼関係が傷つくので住宅ローンが使いにくくなるのは避けられません。
その仕組みをもう少し詳しく見てみましょう。
ブラックリスト入りは避けられない
ブラックリストに掲載されるというのは、個人信用情報へ金融事故として掲載されることです。
これは、任意売却がきちんと成立した場合であったとしても同じです。
ブラックリストに載るかどうかは、住宅ローンを滞納無く返済を続けられたかどうかにかかっております。
そのため、任意売却であれ、競売であれ、住宅ローンが支払えなくなった時点で、もはや避けることはできません。
ただしブラックリストは永久ではない
では、ブラックリスト入りすれば、もう住宅ローンを組めなくなり、家は買えなくなるのでしょうか?
ブラックリストというのは一度掲載されると、永続的にそのままというわけではありません。
ブラックリストに載った理由にもよりますが、一定期間、何も無ければ抹消されます。
住宅ローン滞納の場合は、その住宅ローンを債務を全て支払い終わった日から7年間後に消えると言われています。
その後でしたら、再度、住宅ローンを組める可能性は十二分にあります。
任意売却に優れている会社選びが難しい
任意売却は、債務を減額することだけが目的ではありません。
債務を減額しておしまい、家を売却しておしまいという業者は不親切です。
完了後に、どれだけしっかりと債務者の生活を考えた現実的な返済プランを提案できるか、がとても重要です。
ここを甘く見ている業者が大半ですので、信頼できないなと感じたら早めにセカンドオピニオンを利用し、他社に切り替えることも大切です。
当初の約束が守られていない
結論から申しますと、最初に約束した内容と全然違うというような詐欺的な任意売却業者は確かに存在します。
- 最初に約束していた「引越し代○○万円プレゼント」というのが無かった
- なんの音沙汰もなく、突然「買い手が見つからず任意売却できませんでした」と言われた
当相談室にお越しになられる方の中で毎月数件は、他の任意売却業者で最初の約束通りならず、困っているというご相談です。
債権者と踏み込んだ交渉をしていない
そもそも任意売却で欠かせない、債権者との交渉をやっていない、もしくは適当なところで妥協しているという業者は数多くあります。
その理由は、経験と幅広い知識が必要でなにより一番労力のかかるところだからです。
資格が不要な任意売却という業種には、不動産を取り扱うための宅地建物取引士(旧:宅地建物取引主任者)の資格だけで、交渉のための幅広い知識のバックグラウンドもないまま仕事を請け負っている会社が多いのが事実です。
そのため、任意売却を依頼する際には、くれぐれもその会社の知識と経験をしっかり判断するようにしましょう。
売却してもマイホームを失わない方法がある
任意売却を行うと結局、マイホームは無くなってしまうのか。
一般的に任意売却というのは、他にその家を購入してくれる方があっての制度であるため、やはり家を手放す可能性は高いでしょう。
しかし、リースバックという方法を用いれば、そのまま住み続けることも可能です。
あまり知られていませんが、そんな夢のような制度があるのです。
リースバックという方法なら住み続けられる
リースバックとは、一旦家を売却しますが、今お住まいの家にそのまま住み続けることという条件をのんでくれる買主を探すというシステムです。
つまり、今まで住宅ローンを支払ってきたお家に住みながら、今後は家賃を新所有者に支払うという形で、そのまま自宅に住むことが可能なのです。
どの任意売却会社でもできるわけではない
しかし、これは任意売却の会社ならどこでも気軽に行えるというものではありません。
なぜなら住宅ローンが支払えなくなった家に、そのまま住み続けるためには、債権者の承諾が必要だからです。
住宅ローンが支払えなくなった方に、そのままの条件で債権者が承諾するはずがありませんよね。
そこで、物件の買い取りを任意売却業者が行い、任意売却業者自身が家の所有者で、債務者に賃貸という形で貸し出すリースバックという方法をとります。
こうすれば、いずれもう一度家を買い戻したいという時も、その任意売却業者に直接相談すれば簡単です。
ただし、この方法は、任意売却業者が住宅を購入できる資金力と、債務者の返済プランをしっかり立てられるファイナンシャルプランニング力が欠かせません。
そのため、通常の不動産会社が気軽に行うことはできません。
【まとめ】任意売却はメリットの方が多い
任意売却も魔法の方法ではありません。
大多数の場合、残債務は減額されたとしても残りますし、デメリットとしてブラックリスト入りは避けられません。
また、どの任意売却業者に依頼されるかで、結果は大きく変わってきます。
大前提としては、住宅ローンが支払えず任意売却!ということにならない為に、無理なく返済できる住宅ローンのプランを立てることが何より大切です。
また、やむを得ず住宅ローンの支払いが遅れそうになった際は、いち早く債権者に相談しましょう。
それでも住宅ローンの支払いが困難になった場合は、任意売却を検討してください。
任意売却をするためには、弁護士や司法書士ではなく、不動産売却の専門である宅建業者(この場合は任意売却専門会社)に頼むしかありません。
しかし、前記の通り、任意売却の会社は千差万別です。
1社1社ご自身の足で回り、会社を訪問し、実績や経験と併せて、会社の雰囲気、人柄なども見て決めましょう。
皆さまの幸せなマイホーム生活を心からお祈りしております。