養育費とは、親権を持つ親が一方の親に請求できる子どもの生活費、教育費、医療費などです。令和3年度の司法統計によれば、離婚した夫婦の約9割で母親が親権を取得しています。つまり、多くの場合、養育費は母親から父親に請求する費用ということです。
基本的に、養育費は金銭で授受されますが、住宅ローンと相殺するケースもみられます。
養育費代わりに住宅ローンを支払ってもらうことは可能
厚生労働省によれば、養育費の月額は平均44,660円です。とはいえ、養育費の取り決めをしている世帯は4割にも満たないとのこと。
一方、養育費をもらう代わりに住宅ローンを支払ってもらうと取り決めるケースもみられます。
自宅に住み続けたいという妻子は多い
住宅ローン名義は、夫単独、あるいは夫婦共有であるケースがほとんどでしょう。つまり、多くの場合で養育費を支払う立場になる夫がローンの名義人となっているわけです。
一方「離婚後も自宅に住み続けたい」と考える多くは妻子。これは「子どもを転校させたくない」「せめて住環境だけは変えないであげたい」と考える母親が多いのが理由です。
実際に、当相談室にも「離婚後も自宅に住み続けたい」というお母様方からの相談が多くあります。ただ、ここで問題になってくるのが住宅ローンです。
住宅ローン名義は基本的に変えられない
離婚後、妻子が住み続けるとしても、住宅ローンの名義は基本的に変えられません。
その理由は2つ。1つ目の理由は、そもそも住宅ローンとは金融機関との契約のうえに成り立っており「離婚したから」「妻子が住むから」という理由だけで名義人を変更することはできないのです。
そしてもう1つの理由は、多くの場合、妻に返済能力がないこと。やはり夫と比べて収入が低い妻が多く、夫名義、あるいは夫婦の共有名義のローンから妻単独のローンに借り換えるには収入が足りないケースが多くみられます。
- 妻子は住み続けたい
- だけどローンを妻の名義にすることは難しい
- だから夫に返済を続けてもらうしかない
このような理由から「養育費の代わりに夫に住宅ローンの返済を続けてもらう」という取り決めをする夫婦が多いものと推測されます。
住宅ローンと養育費を相殺した場合の4つのリスク
養育費の代わりに住宅ローンの返済を続けてもらうことは可能なものの、そこには次のようなリスクがあります。
1.住宅ローン返済が滞ると競売にかけられる
「住宅ローンの返済を続ける」と離婚時に約束した夫も、収入減や病気、怪我、新たな家族ができたなどの理由で返済できなくなる可能性があります。
どんな理由であれ、一定期間、住宅ローンの返済が滞ってしまえば、金融機関は家を差し押さえ、競売にかけます。最終的に、そこに住む妻子は強制退去を迫られることになるのです。また、妻が連帯保証人になっている場合は、差し押さえの前に債務の返済を求められます。
2.勝手に家を売却されてしまう可能性も
これは家やローンが夫の単独名義であるケースに限られますが、妻子が住んでいるにもかかわらず、元夫が勝手に家を売却してしまう可能性もゼロではありません。
不動産を売却したり活用したりする権利は、所有者にあります。むしろ、所有者しか持っていない権利です。いくら居住者であっても、所有者が売ってしまえば太刀打ちはできません。
3.「児童扶養手当」がもらえない?
「児童扶養手当」とは、ひとり親を支援する目的で支給される手当です。ただ児童扶養手当には収入制限があり、一定の収入を超えていれば支給されず、収入に応じた減額もあります。
ここでいう「収入」には、所得だけでなく養育費の8割が算入されます。養育費の代わりに住宅ローンを負担してもらっているということは、住宅ローンの返済額の8割が収入としてみなされてしまうということ。その分、手当が貰えない、あるいは減額される可能性があります。
また「元夫名義の家に住んでいる」という状況自体が、手当の支給を決める審査で不利に働くこともあるようです。
4.支払い条件変更のリスクも
養育費は、離婚後に次のような状況になれば減額される可能性があります。
- 元夫に扶養家族ができた
- 元夫の収入が減った
- 元妻が再婚した
- 元妻の収入が増えた
養育費の代わりに住宅ローンの返済を続けてもらっていた場合、減額はローンの返済不能にもつながりかねません。結果として、返済が滞ったり、売却されてしまったりするリスクがあります。
リスクを回避するための対応策
住宅ローンと養育費を相殺した場合のリスクを回避するため、次の2つの対応策を検討しましょう。
合意事項を公正証書に残す
「養育費の代わりに住宅ローンを負担してもらう」
離婚前にこのように約束したとしても、口約束だけであれば「言った」「言わない」の問題にも発展しかねません。よって、離婚前に合意した事項はしっかり書面に残すことが大切です。書面の中でも「公正証書」に残すことをおすすめします。
公正証書とは、約束事項を公証人が作成し、内容を証明する書面。証書に「強制執行認諾文言」があれば、債務不履行があった場合には強制的執行により給与などを差し押さえられます。
離婚時に家を売却する
公正証書は合意事項の証明となり、不払いがあれば強制執行も可能とすることができます。しかし、公正証書があれば100%安心できるかといえば、そうではありません。
そもそも支払い能力がない人に支払いを求めることはできず、居場所がわからず連絡先も変えられてしまえば、その間に住宅ローンの滞納が続いて差し押さえられてしまう可能性もあります。
よって、離婚後の家に関するトラブルを100%避けるには「夫名義の家に住まない」しかありません。離婚時に家を売却するのも1つの方法ですが「夫名義の家としない方法」には次のような選択肢もあります。
- リースバック
- 妻が買い取る
まとめ
住宅ローンの返済と養育費の支払いを相殺することは可能です。しかし「養育費の代わりに住宅ローンを返済し続ける」との約束が果たされるとは限りません。意図的であれ、不測の事態であれ、ローン返済が滞れば家は差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。
離婚前に協議が難航している方、あるいは家の売却やリースバック、買取といった選択肢で迷っている方は、不動産あんしん相談室にご相談ください。弁護士など離婚問題に強い士業・専門家とともに解決にあたらせていただきます。当相談室は、代表を含めすべてのコンサルタントが女性です。相談しづらい内容でも、どうぞお気軽にお問合せください。
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