基本的に、不動産の売却で譲渡損失(売却損)が発生した場合、所得税や住民税は課税されません。したがって、譲渡所得を控除する控除特例を適用する必要もなく、確定申告も必須ではありません。
しかし、住宅ローン残債を下回る金額でマイホームを売却し、譲渡損失が発生した場合は、損失分を給与所得などから控除することができます。
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは?
マイホームを売却したことによる譲渡損失を給与などの所得から控除できる特例を「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。
「損益通算」ってなに?
損益通算とは、ある所得の損失を他の所得から差し引くことを指します。この特例では、マイホームの売却による譲渡損失を、その年の給与所得や事業所得などの他の所得から差し引くことができます。
たとえば、給与所得が500万円で、マイホームの売却による譲渡損失が200万円ある場合、損益通算により課税所得を300万円に減らすことができます。
「繰越控除」とは?
繰越控除は、その年の所得から控除しきれなかった譲渡損失を翌年以降に繰り越して控除できる制度です。この特例では、譲渡損失が発生した年から3年間、繰越控除をすることができます。
たとえば、1年目に700万円の譲渡損失が発生し、その年の所得が300万円だった場合、1年目に300万円を控除し、残りの400万円を2年目、3年目に繰り越して控除することができます。
ただし、合計所得金額が3,000万円を超える年は繰越控除ができません
損益通算の限度額
損益通算できる限度額は、マイホームの売買契約日の前日の住宅ローン残債から売却価額を差し引いた残りの金額です。
たとえば、マイホームの売買契約日の前日に3,000万円の残債があり、マイホームが2,000万円で売却できた場合は、1,000万円が限度額です。
「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の効果をシミュレーション
ここからは、「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の効果をシミュレーションしてみましょう。
売買契約前日時点の住宅ローン残高:3,000万円
売却価格:2,000万円
年間給与所得:400万円
所得税・住民税は各10%と仮定(計算をわかりやすくするため控除額などは考慮しません)
この場合に損益通算できるのは「3,000万円-2,000万円」で1,000万円となります。
1年目
- 給与所得:400万円
- 控除額:400万円(1,000万円の限度額のうち400万円を使用)
- 課税所得:0円
- 所得税:0円(通常なら40万円)
- 住民税:0円(通常なら40万円)
- 合計節税額:80万円
- 残りの控除可能額:600万円(1,000万円 – 400万円)
2年目
- 給与所得:400万円
- 控除額:400万円(600万円の限度額のうち400万円を使用)
- 課税所得:0円
- 所得税:0円(通常なら40万円)
- 住民税:0円(通常なら40万円)
- 合計節税額:80万円
- 残りの控除可能額:200万円(600万円 – 400万円)
3年目
- 給与所得:400万円
- 控除額:200万円
- 課税所得:200万円
- 所得税:20万円(通常なら40万円)
- 住民税:20万円(通常なら40万円)
- 合計節税額:40万円
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を適用するときの注意点
この特例は、前提として「自分が住んでいた国内のマイホーム」を売却し「住宅ローン残債を下回る金額で売却」した場合に適用になります。他にも、次のような適用要件を満たしたうえで確定申告が必要です。
適用要件を満たす必要がある
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること。家屋を解体している場合は体した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
- 以前住んでいたマイホームの場合は、住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却
- 家屋を解体した場合は、解体した日から1年以内に売買契約を締結すること
- 家屋を解体した場合は売買契約日までその敷地を賃貸などに出していないこと
- 売買契約前日までに償却期間10年以上の住宅ローン残高があること
- 買主が親子や夫婦、生計を共にする親族、内縁関係にある人など特別な関係な人ではないこと
確定申告が必要
譲渡損失が発生した場合は、確定申告が必須というわけではありません。しかし、特例を適用するには確定申告が必要です。自動的に適用されるものではないため、ご注意ください。
それぞれの手続き方法は、次のとおりです。
損益通算の手続き
確定申告は、売却した翌年の2月16日〜3月15日までに行う必要があります。必要な書類は、以下のとおりです。
- 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5の2用)
- 所有期間が5年を超えていることがわかる登記事項証明書や売買契約書の写しなど
- 売買契約日前日のローン残高がわかる残高証明書
売却したマイホームの所在地と売主の住民票に記載されていた住所が異なる場合は、別途、戸籍の附票の写し、消除された戸籍の附票の写しその他これらに類する書類でそのマイホームを売った人がそのマイホームを居住の用に供していたことを明らかにするものを提出する必要があります。
繰越控除の手続き
繰越控除を受けるには、 損益通算の適用を受ける手続きをしたうえで、翌年分から繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出する必要があります。
まとめ
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、住宅ローン残債を下回る金額でマイホームを売却した場合、所得税や住民税が節税できる制度です。住宅ローンが完済できない方が選択する任意売却は、同特例の適用要件を満たすケースも少なくありません。
譲渡損失の算出などは少々複雑な計算も必要なため、ご不明点がある場合は税理士にご相談ください。不動産あんしん相談室は全国の税理士と提携しているため、任意売却から確定申告までサポートさせていただくことが可能です。
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