任意売却をすれば、残った住宅ローン、つまり残債務が帳消しになると思ってませんか?
そう言って仕事を取ろうとする業者も存在するみたいですが、残念ながらそんな甘い話はありません。
任意売却で残った住宅ローン(残債)はどうなる?
『いざとなったら任意売却があるから、住宅ローンを支払えなくても何とかなるんでしょ?』
近年、任意売却に注目が集まっているせいか、安直にそう思われている方が増えてきております。
実際「他社では債務が無くなってスッキリするとしか説明されなかったが、実はそうではなく、かなり債務が残ってしまった」と、頭を抱えて相談に来られる事例が多数ございます。
任意売却の仕事を取るために、必要な情報を伏せてお客様にお伝えしている業者もいるとお聞きします。
結論から言いますと、任意売却を行った後に残った債務、いわゆる「残債」は、支払わなければなりません。
まず、ここが今回のお話のスタートになります。
住宅ローンの権利と義務を整理しよう
ここで一度、住宅ローンの権利と義務について整理しましょう。
まずは「マイホーム」に関する考え方です。
完済するまでは自身の所有物件ではない
住宅を購入する際、一括では支払えないので、通常はローンを組むことがほとんどでしょう。
つまり20年、30年、40年とかけて徐々に返済していく『義務』を背負うことになります。
その間は、『マイホーム』と呼ばれていても、事実上はまだ、『ご自身の所有物件』ではありません。
もちろん、毎月支払いを続けていきながら、そこに住み続けるという『権利』は持っております。
そして、払い終わると、めでたく、名実ともに『マイホーム』となります。
ただし、何らかの事情で住宅ローンの支払が滞納し、支払えなくなってしまったらどうなるのでしょう。
この場合は本当に困りますよね。
そこに住み続けるという『権利』は、支払っているから存在するのであって、支払わなければ、その『権利』はもちろん取り上げられてしまいます。
こちらがいわゆる「抵当権の実行」や「競売」といわれる手続きです。
任意売却後の住宅ローン残債は誰に払うの?
しかし、残債務が残っている場合、その残りの債務を支払うという『義務』は背負ってしまいます。
その残債務はいったい誰に支払うのでしょうか?
住宅ローンを組んだ時にお願いした銀行や信用金庫などの金融機関?いいえ、違います。
実は、金融機関は住宅ローンで損をしない仕組みができております。
住宅ローンを組む時、必ず住宅ローン保証会社に保証してもらう、という契約が義務付けられております。
住宅ローンを支払う義務を負った債務者が、住宅ローンを支払えなくなった場合、その保証会社が支払えなくなった債務者に変わって、金融機関にこれを支払うことになるのです。
これを「代位弁済」と言います。
任意売却時には交渉をする必要がある
そして、話はこれで終わりません。
保証会社は、住宅ローンを受け取る権利を金融機関から買い取るかたちになるので、債務を支払えなくなった方へ請求してくる者が、「銀行」から「保証会社」に変わるだけです。
そのため、任意売却時に残債務の支払いについて交渉(話し合い)を行うのは、まさにこの保証会社となります。
ただし、保証会社が前面に立って交渉する場合もありますが、業界の慣例で、別の機関に委託する場合もあるんです。
では、一体誰が督促や交渉をしてくるのでしょうか?
サービサーの存在
サービサーが債権の回収業務を代行します。
サービサーとは
債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等から委託を受けまたは譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者
参考:http://www.servicer.or.jp/servicer/
ドラマやマンガで出てくるような怖い取り立て屋さんではありませんので、その点はご安心ください。
ただ、やはり債権回収のプロですので、一筋縄ではいきません。
保証協会という債権者に依頼されてきておりますので、おいそれと気軽に残債務を減らしましょうとなるわけがないのです。
ほとんどの場合、この交渉がとても骨の折れるところで、不動産の専門知識だけでなく、債務者の支払い能力から現実を見据えた上で、腰を据えたタフな交渉になります。
任意売却で債権者は納得してくれる?
交渉がたった1回の数時間で終わるなんてことはありません。
債務者様から任意売却の依頼を受ける当相談室のような専門会社は、債務者様に代わって、全面的に交渉に当たります。
任意売却では交渉力が勝負
債務者様の職業、健康状態、家族構成、希望などをしっかり把握し、債権者、サービサーがどこまで求めているのかを、互いにヒザをつめて何度も交渉します。
債権者である保証会社やサービサーも、住宅ローンが払えなくなったため、任意売却という手続きを選んでいることは把握しておりますので、是が非でも全額返済させようと考えていることは、ほぼありません。
ただ、安易に同情して減額しようなどということも全く考えておりません。
そこは、当相談室のような任意売却業者と債権者である保証会社やサービサーの交渉に大きく左右されます。
そのため、ここの交渉をいかに債務者にとって有利に進められるかが、重大な要素となります。
任意売却を行う側の誠意と現実性がキモ
そして、もう1つ欠かせない要素があります。
それは、債務者様側の誠意と現実性です。
住宅ローンが返済できなくなった、残債務が残ってしまった、その理由は様々です。
ギャンブルのせいなのか?
健康状態のせいなのか?
リストラのせいなのか?
また、今後は残債務をキッチリと毎月払ってくれそうな人なのか?
そこをしっかり見定められます。
【まとめ】残債がなくなるわけではないが減らすことはできる
住宅ローンを支払えなくなり、任意売却という選択を選んだ場合でも、残債は返済することが原則です。
ただし、その返済先は、銀行や信用金庫などの金融機関ではなく、保証会社となり、通常、請求してくるのは、保証会社もしくは委託されたプロの債権回収会社であるサービサーとなります。
そのため、交渉はタフなものとなりがちです。
そこは、当相談室のような任意売却専門業者が、体を張って全面的に交渉にあたり、依頼主様である債務者様の負担を軽減しつつ、残債の減額に全力をつくします。
しかし、実際に残債を減額できるかどうかは、以下の2点にかかっております。
- 場数と専門知識を持った任意売却専門業者の交渉力
- 依頼主様である債務者様側の収入と誠実さ
実際に、任意売却を依頼される時は、業者とご自身で一度、直接会って相談し、その場で即決せず、しっかり検討し、納得できる業者へ依頼しましょう。
その際、その会社の雰囲気や態度、言葉遣いや話す内容をしっかり精査しましょう。
ただ、1つぜひ覚えて頂きたい点としては、
その場ですぐに契約を結ばせようとする会社は避けたほうがよいでしょう。
よりご自身の希望に沿った仕事をしてくれる会社をお選びいただきたいと思います。