不動産の売却は、その後の暮らしに大きく影響する一大局面ですが、人生で経験するのは1度や2度。売却の流れや必要なものがわからないのは当然であり、不安に思う必要はありません。
この記事では、ローンが残っている不動産を売却する流れに加え、売却にかかる期間や必要書類を解説します。(2024年7月時点)
不動産売却にかかる期間はどれくらい?
(東日本不動産流通機構のデータから作成)
首都圏の物件種別ごとの平均成約期間の推移は、上記グラフのとおりです。2023年は、いずれの物件種別も「80日台」となっています。
不動産会社の媒介契約を締結してからレインズに登録するまでに約1週間、売買契約から決済・引き渡しまでには1〜2ヶ月ほど期間が空くのが一般的なため、不動産会社に売却を依頼してから取引を終えるまでには平均して4〜5ヶ月ほどかかります。
また、こちらはあくまで「首都圏の平均値」です。これ以上の期間で売れることもあれば、これより早く売れる可能性もあるため、参考程度にとどめておきましょう。
不動産を売るまでの流れ
ローンが残っている不動産を売却する流れは、次のとおりです。
①ローン残債を確認する
ローンが残っている家を売却する場合は、まず最初にローン残債を確認しましょう。ローン残債は、次のような方法で確認できます。
- 借入時の返済予定表を見る(繰り上げ返済をしている場合は残債が異なるので注意)
- 金融機関から毎年送付される年末残高証明書を見る
- 金融機関に問い合わせる
②査定依頼
ローン残債が把握できたら、不動産仲介業者に査定依頼をして不動産がいくらで売れそうか確認します。仲介業者への査定依頼方法は、次の2つに大別されます。
- 机上査定(簡易査定):机上でわかる情報から行う簡易的な査定
- 訪問査定:机上でわかる情報に加え、現地やその周辺から得られる情報から行う査定
査定の精度は、当然ながら訪問査定のほうが高いです。
「仲介業者の対応力を見たい」「まずは大まかな金額を知りたい」という理由であれば机上査定を依頼しても良いでしょうが、実際に売却する場合は必ず訪問査定を依頼するようにしましょう。査定額は、売り出し価格を決める際の重要な指標となるため、高い精度が求められます。
不動産を売ったお金でローンが完済できそうになく、充当する資金もない場合は、売らないという選択をするか「任意売却」という特別な方法で不動産を売ることになります。任意売却については、以下の記事をご覧ください。
不動産あんしん相談室では、一般的な不動産売却に加え任意売却にも対応しているため、そのままご売却を進めていただくことが可能です。
③媒介契約
査定結果を見て、売却の依頼を決めたら不動産会社と「媒介契約」を締結します。媒介契約は「売買契約」ではなく、不動産会社に不動産売却の仲介を依頼するための契約です。
媒介契約には、次の3つの種類があります。3つの媒介契約の違いは、以下のとおりです。
④売り出し価格を決める
媒介契約締結時に、売り出し価格を決める必要があります。査定額をそのまま売り出し価格にしても問題ありませんが、販売価格は売主が決めるものです。
査定額より著しく高い金額で売り出すと売却できないおそれがありますが、ローン残債や住み替え先の予算なども考慮しながら売り出し価格を決めていきましょう。
⑤販売活動
不動産仲介業者は、次のような方法で物件の販売活動を行います。
- レインズに登録する
- 不動産ポータルサイトに掲載する
- 販売図面を作成する
- 自社顧客に紹介する
- チラシを作成する
専任媒介契約、あるいは専属専任媒介を締結した場合は、定期的に仲介会社から販売活動の報告があります。問い合わせ数や内覧数などの反響も見ながら、興味を持ってくれる可能性が高い方に情報が届くように販売方法を調整しながら早期売却を目指します。
⑥購入希望者との交渉
続いて、購入希望者から「購入申込書」や「買い付け証明書」と呼ばれる書類が提出されます。この時点では、まだ売買は確定していません。購入申込書や買い付け証明書には、購入希望者の希望する金額や売買条件が記載されています。購入希望額は、販売価格と同じであるとは限りません。また、購入希望者が有利になるような条件を希望される可能性もあるため、ここから売買条件の交渉が始まります。
とはいえ、実際に交渉するのは仲介業者です。売主は、ローン残債も考慮して自分の希望を仲介業者に伝えましょう。
⑦売買契約
売主、買主、双方が売買条件に納得したら、ようやく売買契約となります。売買契約の場では、次のようなことが行われます。
- 重要事項説明書の読み合わせ
- 売買契約書・設備表・物件状況報告書の内容の確認
- 署名・捺印
- 手付金の授受
⑧引き渡し準備
売買契約から決済・引き渡しまでは、1〜2ヶ月程度の期間が空くのが一般的です。この間に、買主はローンの本審査を通します。売主は、この間にライフラインや火災保険の解約や引越し業者への依頼、転出届けなど、引き渡しに向けた準備をしておきましょう。
また、住宅ローンの完済に向けた準備も必要です。決済日が決まったら、まずローンを借り入れている金融機関に連絡して「決済時にローンを完済したい」と伝えます。
すぐに金融機関から抵当権の抹消に必要な書類が送られてきますので、必要事項を記載して金融機関と抵当権抹消登記を委託する司法書士に確認してもらいます。抵当権抹消書類の準備には2週間程度かかることもあるため、決済日が決まり次第、速やかに金融機関に連絡しましょう。
⑨決済・引き渡し
決済・引き渡しで行われるのは、次のようなことです。
- 手付金を除いた残代金の授受
- ローン完済と抵当権抹消手続き
- 鍵の引き渡し
- 所有権移転登記手続き
- 管理費・修繕積立金・固定資産税・都市計画税の精算
- 引き渡し完了証の授受
ローンが残っている不動産を売却する際は、残代金の受領と同時にローンを完済するのが一般的です。抵当権の抹消手続きも決済・引き渡し時に行われます。加えて、所有権移転手続きをして、鍵を引き渡して取引完了となります。
⑩確定申告
不動産売却時の確定申告は必須ではありません。確定申告が必要なのは、次のようなケースです。
- 譲渡所得が発生したとき
- 譲渡所得を控除する特例を適用するとき
譲渡所得とは簡単にいえば「売却益」のことを指しますが、購入時より高く売れなかった場合も所有期間などによっては譲渡所得が発生する可能性があるため不動産仲介業者に聞いておくようにしましょう。
また、住宅ローンが残っている自宅の売却をローン残債を下回る金額で売却した際には、給与などその他の所得と損益通算および繰越控除ができる特例が適用となります。このようなケースは確定申告が「必須」というわけではありませんが、この特例を適用するためには確定申告が必要です。
確定申告時期は、基本的に不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までです。
不動産の売却に必要な書類をタイミングとともに紹介!
不動産売却に必要な書類も少なくありません。必要となるタイミングは異なるため、ここではタイミングごとに必要となる書類を解説します。
査定依頼時に必要な書類
査定依頼時には、次のような書類を準備しておきましょう。
- 登記識別情報(権利証)
- 本人確認書類
- 住宅ローン残高証明書など残債がわかる書類
- 確定測量・境界確認証(あれば)
- リフォーム・メンテナンス歴がある場合は内容や時期がわかるもの
- 取得時の売買契約書・工事請負契約書
- 図面・設備の仕様書
- 建築確認済証・検査済証
さまざまな書類を記載しましたが、多くの場合、ファイルや封筒などに購入時の書類としてまとめて保管されているはずです。見つからない書類があっても、査定できないというわけではありません。見つからない旨を仲介業者に伝えて、判断を仰ぎましょう。
売買契約時に必要な書類
- 実印
- 印鑑証明書(3ヶ月以内に取得したもの)
- 本人確認書類
- 付帯設備表・物件状況等報告書(仲介業者が用意したものに記載)
査定時に必要な書類に加え、売買契約時には上記のようなものが必要です。
決済・引き渡し時に必要な書類
- 実印
- 印鑑証明書(3ヶ月以内に取得したもの)
- 本人確認書類
- 預金通帳・キャッシュカード
- 分譲時のパンフレットや設備の取扱説明書
- 抵当権抹消登記申請書
- 管理規約・使用細則(マンション)
- 引き渡す物件の鍵
引き渡し時には、設備の説明書やマンションの管理規約など、買主に引き渡す書類も一つにまとめておきましょう。ローンを完済したあとの抵当権の抹消に必要な書類は、事前に金融機関からもらっておきます。
その時々に必要な書類は仲介業者からアナウンスしてもらえるため、売却前に過度に心配する必要はありません。
まとめ
ローンが残っている不動産を売却する際には、まずローン残債を確認し、その金額を踏まえた価格設定をする必要があります。売買契約後も、売主がやるべき手続きはあります。引き渡し日が決まり次第、すぐに金融機関に連絡し、ローンの完済と抵当権抹消の手続きを進めなければなりません。
もちろん必要な手続きはその都度、仲介業者がお知らせしてくれますが、流れを理解しておくと精神的に余裕を持って売却に臨めるはずです。
ローンが残っている家を売却する方やローンの返済にお困りの方を多くサポートしてきた不動産あんしん相談室は、売却手続きはもちろん、不動産をできる限り早く売却できる「買取」やローンが完済できる見込みがない不動産でも売却できる「任意売却」といた特別な売却方法も含めてご提案することができます。ローンが残っている家の売却にお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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