相続事案で最も多いトラブルは「親族間の不動産」だと言われています。
その原因として、不動産は現金のようにわかりやすく分割しにくいため、「とりあえず両方の名義にしておこう」という共有持分が多く発生していることが考えられます。
一見、共有名義にしておくことが最も平等な方法のように感じられますが、共有不動産の活用方法は基本的に共有者全員の同意がなければできないことがほとんどです。
今回は相続によって、アパートを引き継いだ兄弟のトラブル事例をご紹介します。
マンション・アパートを子が相続するよくある例
父親の相続財産は自宅・預金のほか、経営していたアパートがありました。
自宅と預金は今後の生活のためにと妻が受け取ったため、子どもたち(兄弟)にはアパートを相続することに。
兄弟は結婚しており、それぞれ持ち家があったため、自宅の相続は不要。
アパートのローン返済は終了しており、「自己資金を出すことなく家賃収入が入るなら」と快く承諾しました。
築古のマンションは修繕費が必要
しかし兄弟にはアパートの経営経験がなく、ローンが残っていないため、あとは家賃収入が入るだけだと思っていたのです。
それは大きな間違いで、築年数の古い物件はメンテナンスが必要になります。
築20年を経過するようなマンション・アパートの場合は、入居者が退去するたびに数十万円〜100万円程度の修繕費がかかることも。
メンテナンスしたものの、なかなか次の入居者が決まらず、空室状態が続くともちろん家賃収入は入ってきません。
そうなると、いくらローンの返済がないとはいえ、自分のお金を持ち出ししてアパートの修繕を行うことになります。
自己持分のみであれば同意なしでも売却可能
そこで問題になるのは、今後売却するか、建て替えなどをしてこのまま経営を続けるか。
兄弟の意見が同じであれば問題ありませんが、一方は売却・一方は存続を希望すると話がややこしくなります。
基本的に共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
しかし、あまり知られていませんが、自分の持分のみであれば共有者の同意なしで売却することが可能なのです!
1人でも売却希望であれば売った方が良い
仮に売却を希望している弟が、自己持分1/2を第三者に売却したとしましょう。
その場合、兄が引き続きアパート経営をするのであれば、その第三者に家賃を支払うもしくは買取をしなければいけません。
そうなると、当初の予定だった「自己資金を出すことなく家賃収入を得る生活」とはほど遠いものになりますよね。
このような場合、兄は共有を解消するためアパートを売却するしか方法はないでしょう。
考え方によっては、今後の経営状況に頭を悩ませることもなくなり、売却資金を2人で分けることができるので、お互いのためにはベストな選択かもしれません。
まとめ
このように相続でアパート・マンションの経営を引き継ぎ、その名義人が複数に渡ると、思わぬトラブルに発展するケースがあります。
相続時に「とりあえず不動産は共有名義にしておこう」というケースが非常に多いのですが、それは今後の活用方法を全員で同意していくという約束を交わすようなものであることを忘れてはいけません。
またいざ売却しようと思っても、共有持分のみのようなややこしい不動産は買い手がつきにくい傾向があります。
どうしても「共有名義の不動産を売却したい」「自己持分だけでも買い取ってほしい」という場合は、専門の不動産会社に依頼しましょう。