離婚の際、妻が家に残り、出て行く夫が住宅ローンを支払う約束をすることもあると思います。
このような場合でも、夫がきちんと住宅ローンを支払ってくれている限り、大きな問題になることはそんなにありません。
しかし、夫自身に住宅ローンを払う意思があっても、何らかの事情で払えなくなってしまうこともあります。
今回は元夫が高度障害で就業不能になってしまったBさんの例をみてみましょう。
住宅ローン支払い中の元夫が事故で要介護状態に
2人の子どもを育てているシングルマザーBさんは、7年前に夫の浮気が原因で離婚。
その際、夫名義の持ち家にはBさんと子どもたちが住み続け、夫は慰謝料のつもりで離婚後も住宅ローンを払い続ける約束をしました。
離婚後も元夫は近所に住んでおり、こどもたちも頻繁に行き来するなど、関係は悪くありませんでした。
元夫は約束どおり住宅ローンも払ってくれていたので、安心して暮らすことができていたBさん。
ところが、その元夫が2年前に、不慮の事故から介護が必要な状態になり、働けなくなってしまったのです。
自分で住宅ローンを負担するのはやはり厳しい
住宅ローンの支払いが困難な状態になった元夫の代わりに、Bさんは自分で元夫名義の住宅ローンを払うようになりました。
こどもたちも今の家が気に入っていたため、Bさんは何としても家を維持したかったのです。
しかし、Bさんはまだ小さいこどもたちに手がかかるので、時間の短いパート勤務。
収入の少ないBさんにとって、毎月の住宅ローンの支払いは厳しく、生活もギリギリの状態でした。
元夫の団体信用生命保険は請求できる?
そんなとき、Bさんは住宅ローンを組んだとき団体信用生命保険(団信)を付けていたのを思い出し、団信を請求できないかと考えました。
団信に加入していれば、住宅ローン債務者が死亡または高度障害状態になった場合に保険金がおり、ローン残高を完済できるからです。
元夫は自分で金融機関に相談できる状態ではなかったため、Bさんは元夫の代わりに金融機関に事情を話し、団信の請求について相談しました。
しかし、金融機関側からは「契約違反だから団信がおりないかも」との返答が…。
Bさんは慌ててしまいました。
住宅ローン債務者が家に住んでいないのは契約違反
住宅ローンは本人が住むことを条件とし、他のローンに比べて金利が低く抑えられています。
ですから、住宅ローン債務者本人が住んでいないということは、金融機関との間では契約違反になってしまいます。
住宅ローン契約では、通常、「債務者側が契約違反をした場合には、金融機関側はローン残金の一括返済を要求できる」という条項が入っています。
つまり、Bさんの元夫は、金融機関から一括返済を要求されても、文句は言えない立場ということになります。
元妻が代わりに団信の請求をするのは無理
一方、団信では必ずしも本人居住が条件になっていないこともありますから、団信を受け取れる可能性はあります。
しかし、既に離婚しているBさんは、元夫とは他人ということになりますから、元夫の代わりに団信の請求をすることができません。
もし団信がおりず、同時に住宅ローン残金の一括返済を要求されれば、Bさんたちは家を出て行かざるを得なくなってしまいます。
Bさんは、「こんなことなら金融機関に相談せず、自分が黙って住宅ローンを払い続けた方が良かったのか…」と後悔してしまいました。
Bさんのケースでは、元夫の両親の協力が得られたので、無事団信の請求ができました。
しかし、このようなケースでは、Bさん一人ではどうにもならず、結局家を出て行かなければならないこともあります。
当事者同士の関係が比較的良いケースでも、離婚後は何が起こるかわかりません。
不動産についても、離婚時になるべく清算しておくのがおすすめです。
離婚の際に住宅ローン付きの不動産をどうすれば良いかがわからないときには、ぜひ当相談室の無料相談にご相談ください。