離婚に伴い、自宅の名義変更をしたいという方は少なくありません。
その多くは、「夫名義」あるいは「夫婦共有名義」の持ち家を「妻名義」にしたいというもの。また夫の両親と二世帯住宅に住んでいたご夫婦が離婚し、「父と夫の共有名義」から「父の単独名義」にしたいというご相談も、少なからず当相談室に寄せられます。
ただ、不動産の名義変更というのはそう簡単ではありません。とくに住宅ローンが残っている持ち家の名義変更には、十分な注意が必要です。
離婚で「不動産」の名義変更をする方法
実は、「不動産」そのものの名義を変える手続きは難しいものではありません。
所有権移転登記はご自身で法務局に出向いて行うこともできますし、司法書士に委託することも可能です。
財産分与に伴う所有権移転登記に必要なもの
離婚時の「財産分与」として自宅の名義変更をする場合は、以下の書類が必要です。
- 住民票
- 印鑑
- 離婚後の戸籍謄本
- 権利証or登記識別情報
- 印鑑証明・実印
- 固定資産税評価証明書
- 財産分与協議書など登記原因証明情報
比較的、簡単に不動産の名義変更ができるとはいえ、離婚時、夫や妻の独断で所有権移転登記ができるわけではありません。
基本的に、財産分与に伴う所有権移転登記は、離婚する夫婦の共同申請です。また不動産の名義を変える「根拠」となる、財産分与協議書などの書類の添付が必要です。
離婚時の不動産の名義変更の流れ
離婚時の財産分与に伴う不動産の名義変更は、「離婚が成立していること」「財産分与に双方が納得していること」が条件となります。
よって、名義変更までの流れは原則的に以下の通りです。
- 財産分与協議
- 離婚届提出
- 名義変更(共同申請)
※①②は入れ替わることも
【注意】調停離婚では必要書類等が異なることも
夫婦間で財産分与やその他の離婚協議が進まない場合には、調停によって離婚を成立させることがあります。これを、調停離婚といいます。
財産分与を受ける側が単独で申請できる状況においては、必要な書類は以下のようになります。
- 住民票
- 印鑑
- 固定資産評価証明書
- 調停調書など登記原因証明情報
そして、基本的な流れは以下の通りです。
- 調停
- 離婚
- 名義変更(単独申請が認められることも)
離婚後に財産分与請求することも可能ですが、「離婚から2年以内」という期限があります。「一刻も早く離婚したい……」と財産分与協議前に離婚届を出されるケースでは、この期間にも注意が必要です。ただし、財産分与による不動産の所有権移転登記には期限はありません。
離婚時点で住宅ローンが残っているときは要注意!
離婚時の持ち家の所有権移転登記で問題になるのは、持ち家の住宅ローンが残っているときです。
そもそも住宅ローンの借り入れとは、あくまで金融機関と借り入れている人との契約。夫単独で住宅ローンを組んでいるとすれば、それは夫と金融機関との「お金を借りる」「お金を返す」という契約であり、所有権移転登記とは別問題です。
さらにこの場合、金融機関は夫の所有している不動産を担保として高額な資金を貸し出していますので、金融機関の許可なく不動産の所有権を妻に移すなどすれば「違約」とみなされる恐れがあるのです。
住宅ローンの名義を変える方法
住宅ローンの名義変更には、新たに名義人となる人のローン審査が必要です。
たとえば夫単独の名義から妻の単独名義とする場合は、夫が住宅ローンを借り入れたときと同様に、収入や勤務先、個人の信用情報などが審査されます。
同様に、夫から夫の父に名義変更する場合においても、父親の年齢や勤務形態、年収によっては審査が通らない可能性もあります。
財産分与による持ち家の名義変更で「税金」はかかる?
離婚時、持ち家の名義を変更する際に気になることの一つとして「税金」も挙げられるのではないでしょうか。
とくに財産分与を受けた側に「贈与税」がかかるのではないかと心配される方が多いのですが、基本的に財産分与で贈与税は課税されません。
ただし、婚姻生活で得た資産に対して分与額が多すぎる場合には、贈与税の課税対象となるケースもあるので注意が必要です。
また同様に、不動産取得税についても、婚姻生活で得た資産の分与として適正であれば課税されません。
しかし、次の2つの税金は財産分与による名義変更においても課税対象となります。
1.登録免許税
登録免許税とは、不動産の所有権を移転したときなどに納める税金です。財産分与による所有権移転登記においても課税されます。
また、住宅ローンの名義変更をする場合には、抵当権設定のための登録免許税も必要です。
- 所有権移転登記(土地・中古建物):評価額×2.0%
- 抵当権設定登記:借入額×0.4%
登録免許税の軽減措置については、国税庁HPをご参照ください。
2.譲渡所得税
譲渡所得税は、離婚時の財産分与に伴う所有権移転登記で必ず課税される税金ではありません。
譲渡所得税が課税される可能性があるのは、分与した側。つまり、夫名義の家を妻名義に変更するケースでは、夫が課税される可能性があります。
たとえば、「3,000万円」で取得した不動産を妻に分与したとき「4,000万円」の価値になっていた場合、差額である1,000万円に対して譲渡所得税が課税されます。
- 所有期間5年以下:39.63%
- 所有期間5年調:20.315%
ただし、持ち家を譲渡した場合には、譲渡所得から最大3,000万円が控除される「マイホーム特例」が適用となります。つまり、譲渡所得3,000万円までは非課税とすることができるのです。
しかしマイホーム特例は、「夫婦間」の譲渡には適用となりません。よって、離婚成立後の分与にしか適用とならない点にご注意ください。
まとめ
離婚時に持ち家の名義変更をするうえで重要なのは、「家の名義」と「住宅ローンの名義」はまったく別物だと理解すること。家の名義変更は比較的、簡単にできますが、住宅ローンの名義変更は容易ではありません。
住宅ローン残債がある家は、売却や名義変更をしないという選択肢も取れます。家の名義変更だけが、離婚時の選択ではありません。離婚に伴う不動産の問題は、不動産あんしん相談室までどうぞお気軽にご相談ください。
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